裏内庭まとめ:効能・取穴・関連症状

名称

  • 和名:裏内庭(うらないてい)
  • 経穴分類:経外奇穴(足部)
  • 英名:Uraineiting 
  • 意味:「内庭」の裏側にある穴という意味で、主に胃腸疾患に対する裏の補助穴とされる。


取穴(位置・取り方)

  • 足の第2趾の裏(足底側)で、第2中足指節関節の後方陥凹部に取る。
  • 足底を上にして見ると、第2趾の基節骨と中足骨の間に生じる陥凹が目安。
  • 内庭(ST44)の直下、足底面側に位置するため「裏内庭」と呼ばれる。

解剖(近接構造)

  • 表層:足底の皮膚・皮下組織(角質が厚い部分)。
  • 筋層:短母趾屈筋、虫様筋の一部。
  • 神経:足底神経の枝。
  • 血管:足底動脈の末梢枝。


東洋医学的作用(要点)

  • 清胃瀉火: 胃の熱や炎症を鎮め、口渇・口臭・歯痛などを改善。
  • 和中止痛: 胃痛・腹痛・食滞による不快感を緩和。
  • 消食化滞: 食べ過ぎ・消化不良・嘔吐・げっぷに対応。
  • 通経活絡: 下肢のけいれん・足の熱感にも有効。


主な適応症

  • 急性胃炎、胃痛、腹痛、腹満
  • 食滞、消化不良、嘔吐、げっぷ
  • 歯痛、口内炎、口臭
  • 小児の食積・夜泣き
  • 下肢のけいれん、足裏の熱感


刺鍼法・施灸法

  • 刺鍼方法: 垂直またはやや斜めに、0.2〜0.3寸(約3〜6 mm)刺入。
  • 針感: 鋭い痛みを感じやすい部位のため、軽刺激で十分。
  • 灸法: 小豆大の艾炷を1〜3壮。知熱灸・透熱灸いずれも可。
  • 禁忌: 足底の皮膚が厚いため、深刺しや熱傷に注意。


臨床のコツ・刺鍼コンビネーション



古典的応用・文献

  • 『備急千金要方』:「裏内庭,治胃中寒熱,食滞不消,腹満嘔逆。」
  • 『奇穴図譜』:「療飲食不化,嘔吐,齒痛。」
  • 古来より「食滞門」とも呼ばれ、胃腸疾患の特効穴とされている。


臨床メモ

  • 足底の刺激で胃腸の反応を誘発する反射的効果がある。
  • 急性症状に速効性を示すため、応急的治療にも利用できる。
  • 特に小児鍼や家庭灸で人気の高い奇穴。
  • 胃熱・食滞タイプの腹痛や歯痛に対して最も信頼できる足底の奇穴。

※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。

患門まとめ:効能・取穴・関連症状

名称

  • 和名:患門(かんもん)
  • 経穴分類:経外奇穴(背部)
  • 英名:Huanmen 
  • 意味:「患」は病、「門」は出入りの門。すなわち、病を外に出し、邪を去る門という意味をもつ。


取穴(位置・取り方)

  • 患者を直立させ、長い紐の一端を足の第1指先端に当て、しっかりと踏ませて紐を足底から足根部中央を経て上方に伸ばし、下腿後面正中を上行させて委中(膀胱経)に至ってこれを切る。
  • この紐の一端を鼻尖にあて、頭頚部および背部の正中線に沿って後方に垂らし、その下端があたる脊中上に仮点を取る。
  • 別に短い紐で、患者の口を閉じさせ一方の口角から斜上方に鼻中隔直下を経て、他方の口角に至る長さを取る。
  • その中央部を前記の仮点にあてて、左右水平に伸ばして、両端のあたるところに2穴を取る。


解剖(近接構造)

  • 表層:皮膚、皮下組織。
  • 筋層:僧帽筋、菱形筋。
  • 神経:胸神経後枝(T3)。
  • 血管:肋間動脈背枝。
  • 深部構造:肋骨、胸膜(深刺に注意)。


東洋医学的作用(要点)

  • 疏風散邪: 外感の風邪・寒湿を除き、表裏の邪気を調整。
  • 宣通気機: 胸背の気血を通じ、鬱滞を除く。
  • 調和五臓: 五臓の働きを整え、慢性疾患の根本治療に効果。
  • 補虚瀉実: 虚実を兼ねる症に対応できる調整穴。


主な適応症

  • 慢性疾患全般(特に内臓系・呼吸器系)
  • 発熱、悪寒、咳嗽、気管支炎
  • 消化不良、腹満、食欲不振
  • 慢性疲労、虚弱体質、免疫低下
  • 疼痛性疾患(肩背部痛、肋間神経痛など)


刺鍼法・施灸法

  • 刺鍼方向: 内下方へ向けて斜刺。
  • 刺入深度: 0.5~0.8寸。肺尖部に注意して浅めに刺す。
  • 施灸: 温灸・隔姜灸を1~3壮。慢性虚弱体質の調整に良い。
  • 禁忌: 深刺による気胸に注意。痩身者は特に浅刺で行う。


臨床のコツ・刺鍼コンビネーション



古典的背景・文献

  • 『奇穴図譜』:「治五臓百病,風邪侵入,胸背痞満,咳嗽。」
  • 『医宗金鑑』:「患門者,治諸患之門也。」
  • 名称の由来:「病を開きて去る」意をもち、気血鬱滞を解き放つ象徴的な穴とされる。


臨床メモ

  • 背部の「病を出す門」として、五臓六腑の不調を広く調整する。
  • 肺兪と並行して取穴することで、呼吸器疾患に特に効果的。
  • 慢性疾患・虚実混在の体質調整に用いるとよい。
  • 灸治療にも適し、古来より「養生・邪気解放の要穴」として重用された。

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四華まとめ:効能・取穴・関連症状

名称

  • 和名:四華(しか)
  • 経穴分類:経外奇穴(背部)
  • 英名:Sihua
  • 意味:「華」は栄える・盛んの意。「四華」は上下左右に四つ配列し、気血を盛んにし体力を増すことから名づけられた。


取穴(位置・取り方)

  • 紐の準備: 長い紐を一本用意します。
  • 大椎穴(だついけつ)に当てる: 患者を直立させ、紐の中央部を大椎穴(首の後ろの出っ張った骨の下)に当て、首にかけます。
  • 紐の長さを決める: 紐の両端を揃えて前胸部に下垂させ、鳩尾穴(きゅうびけつ)(みぞおち)の部で紐を切断します。これが基準となる長さです。
  • 背部の仮点を決める: 切断した紐の中央部を、今度は甲状軟骨(喉仏)の上に当て、背部に回します。脊柱上の紐の尽きるところに仮点(目安となる点)を付けます。
  • 最終的な取穴: 次に、患者の口を閉じさせ、別の短い紐を使って、一方の口角(口角)から斜め上方にあてて、以下の4箇所に最終的なツボの位置を決定します(左右両側で計4穴)。 


解剖(近接構造)

  • 表層:皮膚、皮下組織。
  • 筋層:僧帽筋、菱形筋。
  • 神経:胸神経後枝。
  • 血管:肋間動脈背枝。
  • 深部構造:肋骨、胸膜(深刺に注意)。


東洋医学的作用(要点)

  • 補益肺気: 肺を補い、呼吸機能や免疫力を高める。
  • 健脾和胃: 消化吸収を助け、疲労や食欲不振を改善。
  • 調理気血: 全身の気血の循環を促し、虚弱体質を改善。
  • 扶正固本: 正気を補い、体質強壮・病後回復に優れる。


主な適応症

  • 慢性疲労、倦怠感
  • 食欲不振、胃弱、消化不良
  • 貧血、虚弱体質
  • 慢性咳嗽、喘息、気管支炎
  • 自汗・盗汗、免疫低下、病後の体力回復


刺鍼法・施灸法

  • 刺鍼方向: やや内下方に向けて斜刺。
  • 刺入深度: 0.5~0.8寸(浅刺。胸膜損傷に注意)。
  • 施灸: 温灸または隔物灸を1~3壮。慢性疾患・虚証に有効。
  • 禁忌: 肺尖部に近いため、深刺は厳禁。


臨床のコツ・刺鍼コンビネーション



古典的背景・文献

  • 『奇穴図譜』:「治虚損、食少、気短、咳嗽、喘息」
  • 『外台秘要』:「補虚羸、益気力、治百労」
  • 「四華」は背部の“養正の四花”とも称され、体の虚弱や慢性疾患の回復に用いられる。


臨床メモ

  • 「四華」は背部で肺・脾・胃の気血を補う特効穴群。
  • 慢性疲労・虚弱・病後回復など、全身の虚証に優れる。
  • 補益・温補系の治療で「足三里」「関元」「命門」と併用されやすい。
  • 虚労や慢性疾患の養生灸として古くから重用されている。

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下極兪まとめ:効能・取穴・関連症状

名称

  • 和名:下極兪(げきょくゆ)
  • 経穴分類:経外奇穴(腰背部)
  • 英名:Xiajishu 
  • 意味:「極兪」とは最も下の兪穴を意味し、腰背部兪穴の中で最下位にあることから名づけられた。


取穴(位置・取り方)

  • 第3腰椎棘突起下方の陥凹部。
  • 取穴時は腹臥位で、腰部を軽く伸展させると位置を取りやすい。


解剖(近接構造)

  • 表層:皮膚、皮下組織。
  • 筋層:広背筋、腰背筋群(脊柱起立筋・多裂筋)。
  • 神経:腰神経後枝、坐骨神経分枝。
  • 血管:腰動脈背枝。
  • 深部構造:第4~5腰椎横突起、仙骨上縁。


東洋医学的作用(要点)

  • 補腎益精: 腎気を補い、生殖機能や泌尿器機能を強化する。
  • 調理膀胱: 排尿障害・残尿感・頻尿などの調整に用いる。
  • 利腰膝: 腰腿痛を和らげ、脚力を回復させる。
  • 活血止痛: 血行を促進し、下焦の疼痛を緩和する。


主な適応症

  • 腰痛、坐骨神経痛
  • 排尿障害(小便不利、遺尿、尿閉、頻尿など)
  • 生殖器疾患(陽痿、早泄、月経不順、不妊症など)
  • 下腹部痛、子宮下垂、冷え性
  • 脚気・下肢の脱力や冷感


刺鍼法・施灸法

  • 刺鍼方向: 内下方またはやや斜め内方に向けて斜刺。
  • 刺入深度: 0.8~1.2寸(体格に応じて調整)。
  • 注意: 深刺しすぎると腎臓・大血管に影響する恐れがあるため、垂直刺は避ける。
  • 施灸: 温灸または隔物灸を1~3壮。冷え・腰下肢痛に特に有効。


臨床のコツ・刺鍼コンビネーション



古典的背景・文献

  • 『奇穴図譜』:「治腰脚痛、婦人経閉不通、膀胱不利」
  • 『医宗金鑑』:「下焦の要穴、腎・膀胱の気を和す」と記される。
  • 背部兪穴の中で最下部にあり、“腎・膀胱の最も深き処”を調えるとされる。


臨床メモ

  • 「下極兪」は腰部兪穴群の“最下の要”。腎気を補い、下焦(泌尿・生殖・腰部)を総合的に調整。
  • 腰腿痛や冷えに対して温灸を加えると特に効果的。
  • 腎兪・志室・命門との併用で、精気を補し全身の活力を高める。
  • 婦人科・泌尿器科領域の「万能穴」としても知られる。

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接脊まとめ:効能・取穴・関連症状

名称

  • 和名:接脊(せっせき)
  • 経穴分類:経外奇穴(背部)
  • 英名:Jieji 
  • 意味:「脊(せき)」に接して並ぶ穴、すなわち脊柱の両側に沿う位置にあることから名づけられた。


取穴(位置・取り方)

  • 第12胸椎棘突起下方の陥凹部。


解剖(近接構造)

  • 表層:皮膚、皮下組織。
  • 筋層:僧帽筋、脊柱起立筋群。
  • 神経:脊髄神経後枝。
  • 血管:肋間動脈背枝、腰動脈背枝。
  • 深部構造:椎骨、椎間関節。


東洋医学的作用(要点)

  • 疏通経絡: 脊柱両側を通る経脈を疏通し、背腰痛や拘攣を緩解する。
  • 調理臓腑: 各椎間部が対応する臓腑の気機を調整する(例:上胸椎=肺・心、中胸椎=脾・胃、腰椎=腎・膀胱)。
  • 補虚・瀉実: 臓腑の虚実に応じて補瀉を行うことができる。
  • 理気止痛: 背中の気滞や寒湿による疼痛を緩和する。


主な適応症

  • 背部痛、腰痛、肩こり
  • 脊柱起立筋の拘攣・筋緊張
  • 内臓性の関連痛(胃痛・腎痛・月経痛など)
  • 月経不順・生理痛・慢性下腹部痛
  • 神経症・自律神経失調症


刺鍼法・施灸法

  • 刺鍼方向: やや内方または斜め下方に向けて斜刺。
  • 刺入深度: 0.3~0.5寸。
  • 注意: 肺尖部(特に上胸椎部位)では気胸防止のため浅刺を徹底。
  • 施灸: 温灸または知熱灸を1~3壮。慢性腰痛・冷え・月経痛に有効。


臨床のコツ・刺鍼コンビネーション



古典的背景・文献

  • 『奇穴図譜』では「治腰背強痛、婦人経閉」と記される。
  • 古来より兪穴と並行して取る補助穴として知られる。
  • 清代『医宗金鑑』では「諸痛皆治の背部要穴」として収載。


臨床メモ

  • 「接脊」は背部全体の気血流通を促す“調整穴”。
  • 肩こりから腰痛まで、脊柱ライン全般の治療に活用できる。
  • 背部兪穴と併用すると臓腑調整効果がより明確になる。
  • 温灸を加えると慢性疼痛・冷え症に特に効果的。

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巨闕兪まとめ:効能・取穴・関連症状

名称

  • 和名:巨闕兪(こけつゆ)
  • 経穴分類:経外奇穴(背部)
  • 英名:Juéquēshū
  • 意味:「巨闕(CV14)」の背部対応点にあたり、心包・心の気血を調える要穴であることから名づけられた。


取穴(位置・取り方)

  • 第4胸椎棘突起下方の陥凹部。
  • 背臥位または伏臥位で、肩をリラックスさせた状態で取穴する。


解剖(近接構造)

  • 表層:皮膚、皮下組織。
  • 筋層:僧帽筋、広背筋、脊柱起立筋。
  • 神経:第8胸神経後枝。
  • 血管:肋間動脈背枝。
  • 臓器:深部には肺下葉上部および心包後面。


東洋医学的作用(要点)

  • 寛胸理気: 胸中の気滞を除き、心下のつかえ・胸悶感を改善する。
  • 安神定志: 心包経を通じて精神を安定させる。
  • 清心瀉火: 心火上炎による不眠・煩躁・口渇を鎮める。
  • 調中下気: 機能的な胃脘部の詰まり・膨満を軽減する。


主な適応症

  • 胸痛、心悸、動悸
  • 胸部絞扼感、息切れ
  • 不安、不眠、情動不安定
  • 胃脘痛、食欲不振
  • 肋間神経痛、背部緊張


刺鍼法・施灸法

  • 刺鍼方向: 内方またはやや下方に向けて斜刺。
  • 刺入深度: 約0.5~0.8寸。
  • 施灸: 温灸・知熱灸を1~3壮。冷えを伴う心窩部痛や動悸に良い。
  • 注意: 肺尖部が近いため深刺を避けること。


臨床のコツ・刺鍼コンビネーション



古典的背景・文献

  • 『奇穴図譜』では「治心痛、怔忡、胸悶」と記載。
  • 清代以降、巨闕(CV14)の背部反応点として応用された。
  • 臨床的には心包兪・膈兪の間に取ることが多く、「心包の後兪穴」とも呼ばれる。


臨床メモ

  • 情動性胸部症状や心窩部のつまりに特に有効。
  • 膈兪との連携で「上下の気滞」を解消し、心下満の治療に応用される。
  • 胸椎周囲の圧痛点・硬結として反応が現れやすい部位。
  • 慢性的なストレスで胸が重い患者に、温灸での治療が好結果を得やすい。

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肩内陵まとめ:効能・取穴・関連症状

名称

  • 和名:肩内陵(けんないりょう)
  • 経穴分類:経外奇穴(上肢部・肩部)
  • 英名:Jiān Nèi Líng
  • 意味:「肩外陵」に対して肩の内側陵部(隆起部)に位置することから名づけられた。


取穴(位置・取り方)

  • 肩関節の前面で、肩髃(LI15)と腋窩横紋前端との中点に取る。
  • 肩関節を軽く屈曲・外転すると、三角筋前部と上腕二頭筋長頭腱の間に陥凹が現れる。その部に取穴する。
  • 肩外陵が肩関節の外側隆起部にあるのに対し、肩内陵は内前方の隆起部に位置する。


解剖(近接構造)

  • 表層:皮膚、皮下組織。
  • 筋層:三角筋前部、上腕二頭筋長頭腱、烏口腕筋。
  • 神経:腋窩神経、筋皮神経。
  • 血管:前上腕回旋動脈、三角筋枝。


東洋医学的作用(要点)

  • 疏経活絡: 経絡を通じて肩関節周囲の滞りを解消し、運動を回復する。
  • 祛風除湿: 風寒湿による関節痛・拘縮を取り除く。
  • 理気止痛: 気滞・血瘀による肩痛・上腕痛を緩解する。


主な適応症

  • 肩関節周囲炎(五十肩)
  • 上腕神経痛
  • 上肢挙上困難
  • 肩前部痛、腕の重だるさ
  • 腱板損傷後の可動制限


刺鍼法・施灸法

  • 刺鍼方向: 肩関節の中心(肩峰の方向)へ向けてやや斜刺。
  • 刺入深度: 約0.8~1.2寸。
  • 施灸: 知熱灸または温灸。慢性の肩痛や冷えのある場合に有効。
  • 注意: 深刺し過ぎると関節包に達する恐れがあるため、慎重に行う。


臨床のコツ・刺鍼コンビネーション

  • ① 五十肩・肩関節周囲炎:
    • 肩内陵(EX-UE)+肩外陵(LI15近傍)+肩髃(LI15)肩貞(SI9)肩髎(TE14)→ 肩関節前後のバランスをとることで可動域を広げる。 特に、肩の前方痛には肩内陵、後方痛には肩外陵が有効。
  • ② 上腕前面の放散痛:
  • ③ 頑固な肩前部痛・夜間痛:
  • ④ 腱板炎や烏口突起部痛:
    • 烏口腕筋の緊張緩和を目的に、肩内陵を軽く斜め下方へ刺鍼し、 必要に応じて運動鍼を併用すると効果的。



古典的背景・文献

  • 清代『外科正宗』などに類似点の記述があり、肩外陵と対の奇穴として後世に定義。
  • 現代臨床では「肩前部痛・五十肩の特効穴」として多くの鍼灸師が活用。
  • 一部の古典では「肩前陵」とも表記される。


臨床メモ

  • 肩内陵は肩前方の可動域(前挙・屈曲)に特に関与する。
  • 肩外陵との対比で、痛みの位置を判断して使い分けると効果的。
  • 運動鍼(刺鍼後に軽く肩を動かす)を加えると治効が高まる。
  • 冷え・湿邪の関与が強い場合は、灸療法を併用するのがおすすめ。

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