心包経まとめ

1.意味・役割(心包経とは何を司るのか)

手の厥陰心包経は、「心を包む」経絡とされます。

心包は古典で

  • 心主の使
  • 臣使の官
  • 喜楽を出す

と表現されます。

心そのもの(君火)が直接外邪に侵されないように、その外側で働く“防御・調整の層”。

五行では「火」に属し、表裏関係は 手の少陽三焦経

心経が「中心の火」なら、
心包経は

社会的・情緒的に表現される火

と整理できます。


2.流注(走行)

胸中(心包)に起こり、

  1. 心包に属す
  2. 横隔膜を下り三焦に絡う
  3. 体表へ出て乳頭外側
  4. 上腕内側中央
  5. 肘(曲沢)
  6. 前腕内側中央
  7. 手関節(大陵)
  8. 中指端(中衝)

上肢内側の

  • 前:肺経
  • 中央:心包経
  • 後:心経

という三層構造の“中央ライン”。


3.病証(古典的整理)

■ 是動病

  • 胸中熱
  • 心痛
  • 掌中熱
  • 臂内廉痛


■ 所生病

  • 煩心
  • 心痛
  • 面赤
  • 目黄
  • 腋腫
  • 肘攣

心経に似るが、より「熱」「煩」が強調される。


4.五兪穴・五要穴

■ 五兪穴

種類 経穴
井木中衝
栄火労宮
兪土大陵
経金間使
合水曲沢

火経なので栄穴(労宮)が本気。


■ 五要穴

内関は極めて使用頻度が高い。


5.体にどう現れるか(臨床的視点)

■ ① 胸部症状

  • 胸苦しさ
  • 胸痛
  • 動悸
  • 息苦しさ

精神的ストレス由来が多い。


■ ② 情緒不安定

  • 不安
  • パニック傾向
  • 不眠
  • イライラ

心経よりも“対人ストレス”に反応しやすい印象。


■ ③ 手掌の熱感

労宮の反応は精神状態を反映しやすい。


■ ④ 吐き気

内関は悪心嘔吐の要穴。



6.どのように治療するか

■ ① ストレス性胸部症状

呼吸が深くなるかを確認。


■ ② パニック・不安

心経と区別しつつ使う。


■ ③ 胃気上逆

心包は三焦を絡うため、消化器症状にも応用可。


7.構造的に見る心包経

心包経は

  • 心を守る
  • 上肢内側中央
  • 三焦と関係
  • 情緒に強く反応

物理的臓器というより、

心機能の調整バッファ

と考えると理解しやすい。

外界からの刺激が直接心を乱さないよう、ワンクッション置く層。


8.研究ノートとして掘れる問い

  • 心経と心包経の使い分け基準は?
  • 内関刺激と自律神経指標の相関は?
  • 労宮の温度変化と情動の関係は?
  • 心包経圧痛は社会的ストレスと関連するか?



9.まとめ

心包経は

  • 心の防御層
  • 情緒調整ライン
  • 胸部と手掌を結ぶ経絡
  • 三焦と接続する火の通路

心経が「本体の火」なら、心包経は「社会的に揺れる火」。

臨床ではストレス関連症状の中核経絡として非常に重要。

※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。

腎経まとめ

1.意味・役割(腎経とは何を司るのか)

足の少陰腎経は、生命の根本に関わる経絡です。

東洋医学における腎は、

  • 精を蔵す(先天の本)
  • 成長・発育・生殖を主る
  • 骨を主り、髄を生じ、脳に通ずる
  • 水を主る
  • 納気を主る(呼吸を深める)
  • 耳に開竅する

とされます。

五行では「水」に属し、表裏関係は 足の太陽膀胱経

腎は

生命エネルギーの貯蔵庫

と整理できます。

肺が「気を取り込む」なら、腎は「気を受け止める」。

心が「火」なら、腎は「水」で制御する。

全体のバランス軸です。


2.流注(走行)

足小趾下より起こり、

  1. 足底(湧泉)
  2. 内果下方
  3. 下腿内側後縁
  4. 膝内側
  5. 大腿内側後縁
  6. 会陰
  7. 腎に属し、膀胱を絡う
  8. 肝・横隔膜を貫き肺へ
  9. 咽喉を経て舌根へ

非常に深層的な走行を持ちます。

下肢内側後方という位置は、

  • 前:脾経
  • 中央:肝経
  • 後:腎経

という陰経三層構造の最も後ろ。

身体の「深部・根部」を象徴します。


3.病証(古典的整理)

■ 是動病

  • 飢不欲食
  • 面黒
  • 咳唾血
  • 咽乾
  • 足下熱
  • 臂内後廉痛

生命力の低下を思わせる症状が多い。


■ 所生病

  • 口熱
  • 咽腫
  • 心煩
  • 腸澼
  • 痿厥
  • 嗜臥

虚・衰・慢性傾向が強い。


4.五兪穴・五要穴

■ 五兪穴

種類 経穴
井木湧泉
栄火然谷
兪土太谿
経金復溜
合水陰谷

水経なので、合穴が水。


■ 五要穴

太谿は腎経の中心的存在。


5.体にどう現れるか(臨床的視点)

■ ① 足底・内果周囲の冷え/ほてり

湧泉は生命反応が出やすい。


■ ② 腰痛・膝痛

腎は「骨を主る」。

慢性腰痛は腎虚の代表症状。


■ ③ 耳症状

  • 耳鳴
  • 難聴

腎精不足の典型。


■ ④ 呼吸の浅さ

納気不足。

吸気が続かない。


■ ⑤ 精神症状

  • 恐れやすい
  • 意欲低下
  • 疲労感
  • 抑うつ傾向

腎は「志」を蔵す。


6.どのように治療するか

■ ① 腎陽虚

冷え・むくみ・慢性疲労。


■ ② 腎陰虚

ほてり・のぼせ・耳鳴。


■ ③ 納気不足

呼吸が深くなるかを指標に。


■ ④ 精神疲労

水で火を制す。


7.構造的に見る腎経

腎経は

  • 足底から始まる
  • 深層を上行
  • 肺・心に影響する

これは象徴的です。

地面(足底)から生命が立ち上がるライン

とも読める。

物理的な管ではなく、

  • 重力軸
  • 支持軸
  • 深層筋連鎖

として理解すると臨床と結びつきやすい。


8.研究ノートとして掘れる問い

  • 湧泉刺激と自律神経変化の関係は?
  • 腎経圧痛と慢性疲労の相関は?
  • 腎虚と腰部深層筋緊張の関係は?
  • 納気機能は横隔膜運動とどう関連するか?



9.まとめ

腎経は

  • 生命の根
  • 成長・老化の軸
  • 水の本体
  • 深層の支柱

膀胱経が「外の水」なら、腎経は「内の水」。

臨床では慢性疾患・加齢性変化の中核経絡と言える。

※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。

膀胱経まとめ

1.意味・役割(膀胱経とは何を司るのか)

足の太陽膀胱経は、十二経脈の中で最も長く、最多の経穴(67穴)を持つ経絡です。

東洋医学における膀胱の働きは

  • 津液を貯留する
  • 気化作用によって排泄を調整する

しかし経絡としての膀胱経は、それ以上に重要な意味を持ちます。

全身の陽気を背部に集約する経絡

五行では「水」に属し、

  • 表裏関係:足の少陰腎経
  • 太陽経に属する(最も外側・最表層の陽)

膀胱経は単なる排尿の経絡ではなく、

  • 外邪の侵入口
  • 臓腑の反応点の集積
  • 背面の構造軸

という多層的役割を持ちます。


2.流注(走行)

目内眥(睛明)に起こり、

  1. 頭頂へ上る
  2. 後頭部
  3. 頸項部
  4. 背部を下行(第一側線)
  5. 腰部
  6. 仙骨部
  7. 下肢後面
  8. 外果後方
  9. 足小趾外側(至陰)

途中で背部にて二行に分かれます。

  • 第一側線(内側):兪穴が並ぶ
  • 第二側線(外側):精神・情志と関連が深い

この二重構造が膀胱経最大の特徴。


3.病証(古典的整理)

■ 是動病

  • 衝頭痛
  • 目似脱
  • 項如抜
  • 脊痛
  • 腰似折
  • 髀不可以曲
  • 膕如結
  • 腨如裂

→ 走行部の強い痛み


■ 所生病

  • 疟(瘧、おこり)
  • 鼻出血
  • 目黄
  • 背痛

精神症状が含まれる点は重要。


4.五兪穴・五要穴

■ 五兪穴

種類 経穴
井金至陰
栄水足通谷
兪木束骨
経火崑崙
合土委中

水経なので、栄穴が水。


■ 五要穴

特に重要なのは、背部兪穴群肺兪・心兪・肝兪・脾兪・腎兪 など)が、すべて膀胱経上に存在。


5.体にどう現れるか(臨床的視点)

■ ① 頭痛・後頭部痛

太陽頭痛は典型。

風寒の侵入ルート。


■ ② 頸肩背部痛

  • 項部硬直
  • 背部張り
  • 肩甲間部痛

最表層の陽経であるため、外邪反応が出やすい。


■ ③ 腰痛

委中は「腰背の要穴」。

腰痛治療で最も使用頻度が高い経絡。


■ ④ 下肢後面症状

  • 坐骨神経痛様症状
  • ふくらはぎ攣り


■ ⑤ 精神症状

第二側線は

など情志関連穴が並ぶ。

背部は「無意識の投影面」とも読める。


6.どのように治療するか

■ ① 外感風寒

太陽経としての発汗・解表。


■ ② 腰痛

経絡的にも解剖学的にも一致しやすい。


■ ③ 臓腑調整

背部兪穴を用いる。

例:

膀胱経は

臓腑の調整ボード

のような存在。


■ ④ 精神不安

第二側線+心経・肝経併用。


7.構造的に見る膀胱経

膀胱経は

  • 体の最背面
  • 最長
  • 二重構造
  • 全臓腑と接点を持つ

これをどう理解するか。

物理的な「管」ではなく、

背面という身体の支持軸に沿って、全身の状態が投影される座標軸

と見ると整理しやすい。

太陽とは「最外層」。
外界との接点。

膀胱経は

  • 外邪の入口
  • 内臓反応の出口

という双方向性を持つ。


8.研究ノートとして掘れる問い

  • 背部兪穴の圧痛と内臓機能に相関はあるか?
  • 第一側線と第二側線の臨床的差は?
  • 委中の腰痛改善は神経学的にどう説明できるか?
  • なぜ水経が最も外側なのか?



9.まとめ

膀胱経は

  • 最表層の陽経
  • 背部全体を走る最大経絡
  • 臓腑の反応点の集積
  • 外邪の侵入口

臨床的には構造調整と臓腑調整をつなぐハブ経絡と言える。

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小腸経まとめ

1.意味・役割(小腸経とは何を司るのか)

手の太陽小腸経は、心経と表裏をなす経絡です。

東洋医学における小腸の主な働きは

  • 受盛の官(水穀を受け取る)
  • 清濁を分別する
  • 心火を受ける
  • 水液代謝に関与する

つまり小腸は単なる消化器ではなく、

「分ける」「選別する」「仕分ける」

という働きの象徴です。

五行では「火」に属し、心が「君火」なら、小腸はその働きを現場で展開する「相火的役割」とも解釈できます。


2.流注(走行)

小指尺側端(少沢)に起こり、

  1. 手背尺側
  2. 手関節(陽谷)
  3. 前腕後外側
  4. 肘(小海)
  5. 上腕後外側
  6. 肩関節(肩貞)
  7. 肩甲部
  8. 鎖骨上窩
  9. 頸部
  10. 頬 → 外眼角 → 耳前
  11. 耳に入る支脈

体の後面〜側頭部を走る大きなラインが特徴です。

上肢の外側後縁を通るため、心経(内側後縁)とは陰陽で正反対の位置になります。


3.病証(古典的整理)

■ 是動病

  • 咽痛
  • 頸項強
  • 肩・上腕後外側痛
  • 耳鳴
  • 耳聾
  • 顎腫

→ 走行部位に一致


■ 所生病

  • 目黄
  • 頬腫
  • 咽乾
  • 肩背痛
  • 耳疾患

「耳」と「肩背部」が重要キーワード。



4.五兪穴・五要穴

■ 五兪穴

種類 経穴
井金少沢
栄水前谷
兪木後渓
経火陽谷
合土小海

火経なので、経穴(陽谷)が火。


■ 五要穴

※募穴が下腹部にある点は、水液代謝との関係を示唆する重要ポイント。


5.体にどう現れるか(臨床的視点)

■ ① 肩・肩甲部症状

  • 五十肩
  • 肩甲骨内側の張り
  • 頸肩背部の痛み

小腸経は肩背部の主経といってもよい。


■ ② 耳症状

  • 耳鳴
  • 難聴
  • 外耳炎
  • 顎関節症

走行が耳に入るため、耳疾患と深く関係。


■ ③ 水分代謝異常

  • むくみ
  • 尿異常

小腸の「清濁分別」が乱れると、水の偏在が起きる。


■ ④ 精神面(心との関係)

心火が小腸に移ると、

  • 口内炎
  • 舌尖紅
  • 不安
  • 焦燥

が出るとされる。


6.どのように治療するか

■ ① 肩背部痛

後渓は八脈交会穴(督脈)であり、頸〜背部の調整に強力。


■ ② 耳疾患

小腸経は耳前部へ走行するため、外耳〜側頭部疾患に応用しやすい。


■ ③ 心火移熱タイプ

心経とのセット治療が基本。


7.構造的に見る小腸経

小腸経は

  • 上肢外側後縁
  • 肩甲部
  • 耳へ入る

というダイナミックな走行を持つ。

これを機能的に読むと、

心の内的熱が外へ放散されるライン

とも解釈できる。

内側の心経に対し、小腸経は外側に展開する火のライン


8.研究ノートとして掘れる問い

  • なぜ耳に入るのか?腎との関係は?
  • 小腸経の圧痛と肩甲骨可動域に相関はあるか?
  • 後渓を使った督脈治療の再現性は?
  • 心火と小腸火の臨床的違いは何か?



9.まとめ

小腸経は

  • 分別
  • 水液調整
  • 肩背部
  • 心火の出口

を担う経絡。

心経が「内の火」なら、小腸経は「外へ展開する火」。

臨床では肩背部治療の軸経絡として極めて重要。

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心経まとめ

1.意味・役割(心経とは何を司るのか)

手の少陰心経は、「心」と直結する経絡です。
東洋医学における心は、単なるポンプではなく、

  • 神(精神・意識)を蔵する
  • 血脈を主る(血行の統括)
  • 舌に開竅する
  • 汗を主る
  • 面に華する

といった中枢的な働きを持つとされます。

五行では「火」に属し、

  • 表裏関係:手の太陽小腸経
  • 五志:喜
  • 五色:赤
  • 五味:苦

精神・循環・情緒の中心軸としての経絡と捉えると理解しやすい。


2.流注(走行)

心中に起こり、

  1. 心中 → 小腸を絡う
  2. 腋窩(極泉)より体表へ出る
  3. 上腕内側後縁(少陰ライン)
  4. 肘(少海)
  5. 前腕内側後縁
  6. 手関節(神門)
  7. 小指橈側(少衝)に至る

内側後縁を通る上肢のラインが特徴です。
肺経が内側前縁、心包経が内側中央を通るのに対し、心経は最も後ろ寄りを走行します。

この位置関係は、「気(肺)→ 血(心)→ 心包(保護)」という三層構造としても読み解けます。


3.病証(古典的整理)

■ 是動病

  • 咽乾
  • 心痛
  • 渇して水を欲す
  • 臂内後廉痛
  • 掌中熱痛

→ 経絡の走行部および心の機能異常が反映

■ 所生病

  • 目黄
  • 脇痛
  • 臂内後廉痛
  • 掌中熱

「熱」がキーワードになりやすいのが心経の特徴です。


4.五兪穴・五要穴

■ 五兪穴

種類 経穴
井木少衝
栄火少府
兪土神門
経金霊道
合水少海

火経であるため、栄穴が本経穴(火)になります。


■ 五要穴

精神症状に対しては特に神門陰郄通里が軸になりやすい。


5.体にどう現れるか(臨床的視点)

■ ① 精神症状

  • 不眠
  • 動悸
  • 不安
  • 焦燥
  • 多夢
  • 情緒不安定

→ 神を蔵する失調


■ ② 循環系症状

  • 動悸
  • 脈の乱れ
  • 胸苦しさ


■ ③ 上肢内側後縁の症状

  • 小指側のしびれ
  • 肘内側の痛み
  • 手掌のほてり


■ ④ 熱の偏在

  • 口内炎
  • 舌先の紅
  • 顔の赤み
  • 手のひらのほてり

心経は「火」の過不足が症状化しやすい。



6.どのように治療するか(整理の視点)

■ ① 心火亢進タイプ

精神的高ぶりには刺鍼よりも軽刺激や灸の使い分けも検討。


■ ② 心血不足タイプ

単独で心経だけを診るよりも「脾」「肝」との関係を組み立てる方が臨床的。


■ ③ 心腎不交タイプ

火と水のバランス調整。



7.構造的に見る心経

心経は、

  • 内側後縁
  • 小指に至る
  • 火に属す

という特徴があります。

小指は「末端・終端」の象徴とも読めます。
精神の乱れは末端症状として現れるのか、あるいは中枢の乱れが末端へ投影されるのか。

経絡を「物理的実体」と見るより、

心の機能異常が上肢内側後縁に投影される
その投影図を線として整理したもの

と仮定すると、臨床での使い方が整理されやすくなります。


8.研究ノートとして掘れる問い

  • なぜ火経なのに「合水穴(少海)」が重要なのか?
  • 心経単独でどこまで精神症状が変化するか?
  • 心包経との役割分担はどう整理できるか?
  • 心経の圧痛と自律神経反応に相関はあるか?



9.まとめ

心経は

  • 精神
  • 血脈
  • 情緒

を軸とした経絡。

臨床的には「精神の安定ライン」として捉えると応用しやすい。

そして重要なのは、心経を単独で扱うのではなく、脾・肝・腎との関係性の中で位置づけること。

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脾経まとめ

1.脾経の意味と役割

脾経は足の太陰に属する経脈であり、脾に属し、胃と表裏関係をなす。

古典では、脾は

  • 運化を主る(消化吸収と輸送)
  • 昇清を主る
  • 統血を主る
  • 肌肉・四肢を主る

とされる(出典:黄帝内経)。

五行では「土」に属し、受容と生成の中心である。

胃が「受納・腐熟」を担うのに対し、脾は「運搬・分配」を担うと整理できる。

したがって脾経は、

  • 栄養の輸送
  • 水湿代謝
  • 出血傾向
  • 四肢の筋肉状態

と密接に関係する経絡である。


2.流注(経脈の走行)

脾経は足母趾内側端(隠白)に起こり、

  • 足内側
  • 下腿内側後縁
  • 大腿内側
  • 腹部外側
  • 胸部

へと上行する。

陰経として下肢内側を走行し、腹部を経て胸部に至る。

下から上へ「昇る」流れが特徴的であり、脾の昇清作用と対応していると解釈できる。


3.病証

是動病

  • 舌の強ばり
  • 食後の腹満
  • 心下部の痛み
  • 下肢内側の疼痛

所生病

  • 食欲不振
  • 腹脹
  • 下痢
  • 浮腫
  • 月経過多
  • 不正出血
  • 倦怠感
  • 四肢無力

運化失調や水湿停滞、統血失調による出血傾向が中心となる。


4.五兪穴

種類 経穴
井穴隠白
滎穴大都
兪穴太白
経穴商丘
合穴陰陵泉

陰経のため、

井=木
滎=火
兪=土
経=金
合=水

の五行配当。

太白は兪穴かつ原穴であり、脾虚補益の中心穴となる。

陰陵泉は水湿処理に重要。


5.五要穴

公孫は衝脈と通じ、婦人科疾患や消化器症状に用いられる。

地機は急性腹痛や月経痛に応用される。


6.脾経上に現れやすい不調

体表ラインとして

  • 下腿内側後縁のむくみ
  • 大腿内側の張り
  • 内側膝部痛

機能的側面として

  • 消化不良
  • 下痢傾向
  • 浮腫
  • 出血傾向
  • 慢性疲労
  • 思慮過多

脾は「思」を志とするとされ、過度の思慮が脾を傷るとされる。


7.治療の考え方

① 脾気虚

太白脾兪足三里で補益。

② 水湿停滞

陰陵泉公孫で利水。

③ 脾不統血

太白隠白で補脾止血。

④ 中気下陥

百会などと組み合わせ昇提。

胃経との陰陽バランスを常に意識する。


8.臨床上の観察課題

  • 浮腫症例で脾経上に圧痛が出るか
  • 思慮過多と消化機能低下の相関
  • 胃経実証と脾経虚証の同時出現
  • 脾経の昇清失調はどのように体表に現れるか

土の陰陽関係(胃と脾)のバランスを観察することが重要。


9.暫定的まとめ

脾経は、

  • 運化作用
  • 水湿代謝
  • 統血作用
  • 昇清機能

を中心とする機能モデルである。

下肢内側から胸部へ上行する走行は、

  • 昇る力
  • 内向きの安定
  • 土の保持力

を象徴している可能性がある。

胃経(陽明)との対比により、土の陰陽構造がより明確になる。

今後は、脾胃同治の臨床検証を通して整理を深める必要がある。

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胃経まとめ

1.胃経の意味と役割

胃経は足の陽明に属する経脈であり、胃に属し、脾と表裏関係をなす。

古典では、胃は

  • 水穀を受納する
  • 腐熟させる
  • 気血生成の源となる

とされる(出典:黄帝内経)。

陽明は「多気多血」とされ、気血が盛んな経である。

したがって胃経は、

  • 消化吸収の中心
  • 気血生成の基盤
  • 顔面・前面の体表反応
  • 実熱症状との関連

を担う経絡と整理できる。

五行では「土」に属し、受容・養育・中和の性質を持つ。


2.流注(経脈の走行)

胃経は鼻翼外側(承泣付近)に起こり、

  • 顔面
  • 下顎
  • 頸部
  • 胸腹部前面
  • 大腿前面
  • 下腿前面
  • 第2趾外側

へと至る。

体の「前面中央寄り」を大きく縦走する経であり、身体前面の代表的陽経である。

顔面から足趾までを一本で結ぶという点が特徴的である。


3.病証

是動病

  • 悪寒戦慄
  • 伸びをする
  • 顔面の歪み
  • 咽喉の腫痛
  • 膝前面の疼痛

所生病

  • 胃痛
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 多食・消谷善飢
  • 腹満
  • 便秘
  • 顔面浮腫
  • 鼻出血
  • 精神不安

陽明の性質上、実熱症状や消化器症状が中心となる。


4.五兪穴

種類 経穴
井穴厲兌
滎穴内庭
兪穴陥谷
経穴解谿
合穴足三里

陽経のため、

井=金
滎=水
兪=木
経=火
合=土

の五行配当。

特に足三里は合穴かつ土穴であり、補益・調整作用が広範に用いられる。


5.五要穴

豊隆は痰の要穴として頻用され、中脘は胃腑の機能調整の中心穴とされる。


6.胃経上に現れやすい不調

体表ラインとして

  • 顔面のむくみ・痙攣
  • 乳部の張り
  • 腹直筋の緊張
  • 大腿前面の張り
  • 膝前面痛

機能的側面として

  • 胃痛・胃もたれ
  • 嘔吐・しゃっくり
  • 便秘
  • 強い空腹感
  • 口渇
  • 精神的不安定(陽明実熱)

身体前面の緊張と胃機能の関連は、臨床上観察対象となる。


7.治療の考え方

① 胃熱

内庭曲池などで清熱。

② 胃虚

足三里胃兪で補益。

③ 痰湿

豊隆を中心に化痰。

④ 胃気上逆(嘔吐・しゃっくり)

中脘足三里内関などで降逆。

弁証を立てた上で、陽明の「多気多血」という性質を意識し、実熱か虚寒かを見極めることが重要。


8.臨床上の観察課題

  • 胃経の実証で必ず前面ラインに圧痛が出るか
  • 足三里の補益作用はどの程度再現性があるか
  • 顔面症状と腹部緊張の関連
  • 胃経と精神症状の相関

陽明の盛衰がどのように全身に影響するかを検証していく。


9.暫定的まとめ

胃経は、

  • 消化機能
  • 気血生成
  • 身体前面の体表反応
  • 実熱傾向

を中心とする機能モデルとして整理できる。

顔面から足趾までを貫く走行は、

  • 受納から下降への流れ
  • 前面陽経の代表
  • 気血充実の象徴

として理解できる可能性がある。

今後は、脾経との比較を通して土の陰陽関係を検証する必要がある。

※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。