名称
- 和名:患門(かんもん)
- 経穴分類:経外奇穴(背部)
- 英名:Huanmen
- 意味:「患」は病、「門」は出入りの門。すなわち、病を外に出し、邪を去る門という意味をもつ。
取穴(位置・取り方)
- 第3胸椎棘突起下縁の高さで、後正中線(督脈)から外方約3寸。
- 肺兪(BL13)の外方約1寸5分の位置に相当する。
- 取穴時は腹臥位とし、肩甲骨内縁を目安に、棘突起から外方に指3本分(約3寸)を取る。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋層:僧帽筋、菱形筋。
- 神経:胸神経後枝(T3)。
- 血管:肋間動脈背枝。
- 深部構造:肋骨、胸膜(深刺に注意)。
東洋医学的作用(要点)
- 疏風散邪: 外感の風邪・寒湿を除き、表裏の邪気を調整。
- 宣通気機: 胸背の気血を通じ、鬱滞を除く。
- 調和五臓: 五臓の働きを整え、慢性疾患の根本治療に効果。
- 補虚瀉実: 虚実を兼ねる症に対応できる調整穴。
主な適応症
- 慢性疾患全般(特に内臓系・呼吸器系)
- 発熱、悪寒、咳嗽、気管支炎
- 消化不良、腹満、食欲不振
- 慢性疲労、虚弱体質、免疫低下
- 疼痛性疾患(肩背部痛、肋間神経痛など)
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼方向: 内下方へ向けて斜刺。
- 刺入深度: 0.5~0.8寸。肺尖部に注意して浅めに刺す。
- 施灸: 温灸・隔姜灸を1~3壮。慢性虚弱体質の調整に良い。
- 禁忌: 深刺による気胸に注意。痩身者は特に浅刺で行う。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- ① 慢性疲労・虚弱体質:患門+大杼(BL11)+身柱(GV12)+足三里(ST36)→ 免疫力を高め、全身の機能を回復させる。
- ② 呼吸器疾患(咳嗽・喘息):患門+肺兪(BL13)+膏肓(BL43)+太淵(LU9)→ 肺気の鬱滞を解消し、呼吸を整える。
- ③ 消化器症状:患門+脾兪(BL20)+胃兪(BL21)+中脘(CV12)→ 脾胃の働きを助け、消化不良や食欲不振を改善。
- ④ 発熱・慢性炎症:患門+大椎(GV14)+曲池(LI11)+合谷(LI4)→ 体表の熱を散じ、邪気を外に出す。
- ⑤ 痛みや背部の緊張:患門+風門(BL12)+膏肓(BL43)+肩中兪(SI15)→ 背中の筋緊張を緩和し、循環を改善。
古典的背景・文献
- 『奇穴図譜』:「治五臓百病,風邪侵入,胸背痞満,咳嗽。」
- 『医宗金鑑』:「患門者,治諸患之門也。」
- 名称の由来:「病を開きて去る」意をもち、気血鬱滞を解き放つ象徴的な穴とされる。
臨床メモ
- 背部の「病を出す門」として、五臓六腑の不調を広く調整する。
- 肺兪と並行して取穴することで、呼吸器疾患に特に効果的。
- 慢性疾患・虚実混在の体質調整に用いるとよい。
- 灸治療にも適し、古来より「養生・邪気解放の要穴」として重用された。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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