名称
- 和名:足三里(あしさんり)
- 経穴:足の陽明胃経(ST36)
- 英名:Zusanli (ST36)
取穴(位置・取り方)
- 膝蓋骨の外下角と脛骨外側縁を基準に取穴。
- 膝蓋骨外側下角から下方3寸、脛骨前稜の外側1横指に位置する。
- 覚え方:膝のお皿の下外側から指4本分下に下り、すね骨(脛骨)の外側で押して圧痛や陥凹を感じるところ。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚・皮下組織
- 筋層:前脛骨筋、長趾伸筋、腓腹筋外側頭の付近
- 血管:前脛骨動脈の枝、小伏在静脈
- 神経:深腓骨神経、外側腓腹皮神経
- 深部に前脛骨筋があるため、筋腹の厚みに応じて刺鍼深度を調整。
東洋医学的機能(要点)
- 健脾和胃:脾胃を整え、消化機能を高める。
- 補気扶正:気を補い、全身の抵抗力を高める。
- 調理腸胃:便秘や下痢など腸の働きを正常化。
- 安神:自律神経を調整し、精神的安定にも寄与。
- 「足三里は養生の要穴」として、健脚・長寿のツボとして古来より広く用いられる。
臨床応用(消化器疾患・全身強壮)
- 消化器症状:胃もたれ、消化不良、食欲不振、慢性胃炎 → 中脘(CV12)と併用。
- 便秘・下痢:天枢(ST25)+中脘(CV12)と組合せて腸調整。
- 全身倦怠・免疫力低下:足三里+気海(CV6)+関元(CV4)。
- 下肢疲労・筋肉痛:局所の筋肉治療に加え、足三里を補助的に使用。
- その他:不眠、冷え症、自律神経失調にも応用される。
刺鍼法(安全重視)
- 推奨針サイズ:直径0.16–0.20mm、長さ30–50mm(下肢筋肉量に応じて調整)。
- 刺入方向と深さ:
- 皮膚に対して垂直またはやや内方に向けて直刺。
- 約1.0–2.0寸(20–40 mm)を目安に。筋腹をしっかり捉えること。
- やせ型は浅め、筋肉量が多い場合はやや深めに刺入。
- 操作:軽い捻鍼や雀啄で響きを確認。下肢に放散する得気を得ると効果的。
- 保持時間:10–20分程度。低周波鍼通電では5–15分。
- 注意点:深刺時は骨膜刺激による疼痛に注意。強い放散痛やしびれが出たら直ちに抜鍼。
禁忌・注意
- 骨折や外傷部位には刺鍼しない。
- 感染部位・皮膚疾患がある場合は避ける。
- 強刺激により一時的に倦怠感・眠気を誘発する場合がある。
- 抗凝固薬内服者は出血・血腫に注意。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション(消化器症状向け)
- 胃腸調整:足三里+中脘(CV12)+内関(PC6)。
- 全身強壮:足三里+気海(CV6)+関元(CV4)。
- ストレス性胃腸障害:足三里+太衝(LR3)+神門(HT7)。
- 臨床ヒント:局所症状に加え、足三里を養生穴としてルーチンで用いることで再発予防につながる。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。

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