名称
- 和名:膀胱兪(ぼうこうゆ)
- 経穴:足の太陽膀胱経(BL28)
- 英名:Pangguangshu (BL28)
取穴(位置・取り方)
- 仙骨部、第2仙骨孔の高さで、後正中線から外方1.5寸に取る。
- 仙骨孔を確認し、その外方に位置する。
- 「膀胱の背兪穴」として、泌尿器疾患の要穴。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚・皮下組織。
- 筋層:大殿筋、仙棘筋。
- 神経・血管:仙骨神経後枝、外側仙骨動脈分枝。
- 深部臓器:膀胱、尿道と関連が深い。
東洋医学的機能(要点)
- 利尿通淋:排尿困難、頻尿、尿閉、淋証に用いる。
- 清熱解毒:膀胱経の湿熱を清し、尿路感染や炎症に対応。
- 調腸止瀉:下痢、便秘など腸の機能調整にも応用。
- 腰仙部痛の緩和:腰痛や坐骨神経痛にも有効。
臨床応用(泌尿器疾患・消化器症状・腰背部症状)
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排尿困難や尿閉では、膀胱兪(BL28)を用いて膀胱の気化機能を整えることを第一に考えます。臨床ではまず膀胱兪(BL28)を小腸兪(BL27)や中極(CV3)と組み合わせ、局所背部から下腹部への気血の流れを促して排尿を促進します。急性の感染性膀胱炎や明らかな化膿性症状がある場合は、まず医療機関での検査・抗菌治療を優先し、鍼灸は補助的に浅刺や温灸で炎症の消長を促す形に留めます。
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頻尿・夜間頻尿の改善を目的とする場合は、膀胱兪(BL28)を腎兪(BL23)と併用して腎気を補い膀胱の収容機能を支えます。慢性的な尿失禁や過活動膀胱の調整では、膀胱兪(BL28)+腎兪(BL23)+中極(CV3)などの組合せが有効なことが臨床的に多く経験されます。
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下痢や便秘といった腸機能の不調に対しては、膀胱兪(BL28)を天枢(ST25)や足三里(ST36)と併用し、背部から腹部への気血の巡りを整えて消化吸収の回復を図ります。腹痛や腹満には膀胱兪(BL28)+気海(気海(CV6))や天枢(ST25)で対応することが多いです。
- 腰痛・坐骨神経痛に対しては、膀胱兪(BL28)を大腸兪(BL25)や腎兪(BL23)と組み合わせることで背部の筋緊張を緩和し、腰仙部の循環改善を促します。急性のぎっくり腰や劇痛を伴う場合は、まず鎮痛+急性期対応を優先し、膀胱兪は浅刺や軽い刺激で安全に用いることを推奨します。
刺鍼法(安全重視)
- 推奨針サイズ:直径0.20–0.25mm、長さ30–50mm。
- 刺入方向と深さ(初心者向け):
- 仙骨に向けて直刺またはやや内下方に0.5–1寸(約10–20 mm)。
- 深刺しにより仙骨孔を刺激しすぎないよう注意。
- 保持時間:10–20分。急性症状は軽刺激、慢性症状はやや長めに置鍼。
- 灸法:知熱灸・温灸を加えると、頻尿や膀胱虚寒による症状に有効。
禁忌・注意
- 仙骨神経や血管への強刺激を避ける。
- 妊娠初期は原則として腰仙部の強刺激は禁忌。
- 急性炎症(膀胱炎の急性期)では強い灸は避ける。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- 排尿障害(排尿困難・尿閉)には、膀胱兪(BL28)をまず浅刺で刺激し、小腸兪(BL27)および中極(CV3)を併用して、背部から下腹部へと連続的に気血を動かす配穴が有効です。急性期は浅刺や間欠的な捻鍼で様子をみます。
- 頻尿や夜間頻尿の治療では、膀胱兪(BL28)に加えて腎兪(BL23)を補法で用い、腎気を支えることで膀胱の収容・保持機能を補助します。夜間頻尿には夜に温灸(軽め)を併用すると睡眠改善にもつながりやすいです。
- 消化器関連の症状(下痢・便秘・腹満)に対しては、膀胱兪(BL28)を天枢(ST25)や足三里(ST36)と組み合わせると腸運動の調整が得られやすいです。下痢主体のときは補瀉のバランスを見ながら、刺激はやや平補平瀉で行います。
- 腰痛・坐骨神経痛では、膀胱兪(BL28)+大腸兪(BL25)+腎兪(BL23)の組合せが良好な結果を示すことが多く、背部の緊張を和らげるために浅刺で筋層を狙って刺激するのがコツです。
- 実際の臨床では、まず患者の全身状態・炎症の有無・妊娠の有無を確認し、安全第一で浅刺・温灸を基本としてから、反応を見て置鍼時間や刺激量を増減することをおすすめします。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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