厥陰兪まとめ:効能・取穴・関連症状

名称

  • 和名:厥陰兪(けついんゆ)
  • 経穴:足の太陽膀胱経(BL14)
  • 英名:Jueyinshu (BL14)


取穴(位置・取り方)

  • 背部、第4胸椎棘突起下縁の高さ(第4肋間)で後正中線から外方1.5寸に取る。
  • 心包の背兪穴であり、心・胸の症状に広く用いられる。
  • 心兪(BL15)と隣接し、両者をあわせて使用することも多い。


解剖(近接構造)

  • 表層:皮膚・皮下組織・僧帽筋。
  • 筋層:菱形筋・脊柱起立筋群。
  • 神経・血管:肋間神経・肋間動脈分枝。
  • 深部臓器:胸腔内には心膜・心臓が位置するため深刺は禁忌。


東洋医学的機能(要点)

  • 寛胸理気:胸悶・胸痛・心下部のつかえに。
  • 安神作用:不安・不眠・動悸に用いる。
  • 調心包経:心包・心の熱や鬱滞を緩和。
  • 理気止咳:気の巡りを調え咳嗽・喘息の補助にも。


臨床応用(循環器疾患・胸部症状・精神神経症状など)

  • 胸悶や心窩部のつかえには、厥陰兪(BL14)を中心に心兪(BL15)膻中(CV17)と組み合わせ、胸部の気滞を緩和します。息苦しさや胸部圧迫感を伴う場合に有効です。
  • 動悸や不眠などの精神神経症状では、厥陰兪(BL14)を心兪(BL15)神門(HT7)と併用して心包を調え、安神作用を高めます。特にストレス性の胸部不快感には有効です。
  • 心筋虚血や狭心症に伴う胸痛の補助療法では、厥陰兪(BL14)と膻中(CV17)内関(PC6)を用いると心胸部の循環改善を期待できます。ただし急性の胸痛発作や狭心症疑いでは、必ず救急医療を優先すべきです。
  • 咳嗽や喘息の補助治療では、厥陰兪(BL14)を肺兪(BL13)と組み合わせることで胸部の気機を開き、咳発作を鎮めます。慢性呼吸器疾患に適応されます。



刺鍼法(安全重視)

  • 推奨針サイズ:直径0.16–0.22mm、長さ25–40mm。
  • 刺入方向と深さ(初心者向け)
    • 脊柱起立筋に向けてやや斜刺、深さ0.3–0.5寸(約5–10 mm)。
    • 胸腔内(肺・心臓)に到達するリスクがあるため、深刺は厳禁。
  • 保持時間:10–15分。軽度の胸部症状には短め、慢性の不眠・不安にはやや長めに置鍼。
  • 灸法:知熱灸・温灸を胸部不快感や慢性咳に用いる。


禁忌・注意

  • 胸腔臓器(心臓・肺)に近接するため、直刺・深刺は禁忌。
  • 胸痛の原因が循環器疾患にある場合は、必ず医療機関での診断・治療を優先する。
  • 高齢者・体力低下者では刺激量を控えめにし、灸は温熱を過度にしない。


臨床のコツ・刺鍼コンビネーション

  • 胸部の圧迫感や動悸に対しては、厥陰兪(BL14)を心兪(BL15)心兪(BL15)とあわせて使用すると胸中の気機が整いやすくなります。発作的な胸悶には、さらに内関(PC6)を併用すると鎮静効果が期待できます。
  • 不眠や不安の改善には、厥陰兪(BL14)に加えて心兪(BL15)神門(HT7)を選び、鎮静と安神を意識した配穴を行います。精神緊張を伴う症例では有効性が高いです。
  • 咳嗽や喘息の補助療法では、厥陰兪(BL14)を肺兪(BL13)と組み合わせて用いると、胸中の鬱滞が取れ呼吸がしやすくなります。慢性症例では温灸を加えるとさらに有効です。
  • 実際の施術では、深刺を避けるために斜刺・浅刺を基本とし、心胸部の症状を訴える患者には必ず西洋医学的評価を先行することが安全上不可欠です。


※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。

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