名称
- 和名:巨闕兪(こけつゆ)
- 経穴分類:経外奇穴(背部)
- 英名:Juéquēshū
- 意味:「巨闕(CV14)」の背部対応点にあたり、心包・心の気血を調える要穴であることから名づけられた。
取穴(位置・取り方)
- 第8胸椎棘突起下方(GV9・至陽)の外方1.5寸に取る。
- おおよそ膈兪(BL17)と肝兪(BL18)の中間に位置する。
- 肩甲骨の内縁よりやや内側で、左右一対に取穴。
- 背臥位または伏臥位で、肩をリラックスさせた状態で取穴する。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋層:僧帽筋、広背筋、脊柱起立筋。
- 神経:第8胸神経後枝。
- 血管:肋間動脈背枝。
- 臓器:深部には肺下葉上部および心包後面。
東洋医学的作用(要点)
- 寛胸理気: 胸中の気滞を除き、心下のつかえ・胸悶感を改善する。
- 安神定志: 心包経を通じて精神を安定させる。
- 清心瀉火: 心火上炎による不眠・煩躁・口渇を鎮める。
- 調中下気: 機能的な胃脘部の詰まり・膨満を軽減する。
主な適応症
- 胸痛、心悸、動悸
- 胸部絞扼感、息切れ
- 不安、不眠、情動不安定
- 胃脘痛、食欲不振
- 肋間神経痛、背部緊張
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼方向: 内方またはやや下方に向けて斜刺。
- 刺入深度: 約0.5~0.8寸。
- 施灸: 温灸・知熱灸を1~3壮。冷えを伴う心窩部痛や動悸に良い。
- 注意: 肺尖部が近いため深刺を避けること。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- ① 狭心症・心悸・胸痛:巨闕兪+心兪(BL15)+膈兪(BL17)+膻中(CV17)+内関(PC6)→ 心包を開き、胸中の鬱滞を除く。情動性の胸痛や息苦しさにも有効。
- ② 不安・不眠・ストレス性動悸:巨闕兪+神堂(BL44)+神門(HT7)+安眠(EX-HN16)→ 精神的興奮を鎮め、交感神経過緊張を整える。
- ③ 胃脘痛・逆流性食道炎様症状:巨闕兪+胃兪(BL21)+中脘(CV12)+足三里(ST36)→ 心下の詰まりを緩め、胃の気を和す。
- ④ 呼吸困難・胸郭緊張:巨闕兪+肺兪(BL13)+天突(CV22)+列缺(LU7)→ 胸部の気滞を解消し、呼吸を深める。
古典的背景・文献
- 『奇穴図譜』では「治心痛、怔忡、胸悶」と記載。
- 清代以降、巨闕(CV14)の背部反応点として応用された。
- 臨床的には心包兪・膈兪の間に取ることが多く、「心包の後兪穴」とも呼ばれる。
臨床メモ
- 情動性胸部症状や心窩部のつまりに特に有効。
- 膈兪との連携で「上下の気滞」を解消し、心下満の治療に応用される。
- 胸椎周囲の圧痛点・硬結として反応が現れやすい部位。
- 慢性的なストレスで胸が重い患者に、温灸での治療が好結果を得やすい。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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