名称
- 和名:接脊(せっせき)
- 経穴分類:経外奇穴(背部)
- 英名:Jieji
- 意味:「脊(せき)」に接して並ぶ穴、すなわち脊柱の両側に沿う位置にあることから名づけられた。
取穴(位置・取り方)
- 第1胸椎から第5腰椎までの各椎棘突起の両側0.5寸に取る。
- 脊柱の両側に左右対称に15対存在する。
- 背部を軽く前屈させ、脊柱起立筋の外縁寄りに指を当てて触診する。
- 経穴としては各椎間レベルに対応した内臓機能調整を目的に取穴される。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋層:僧帽筋、脊柱起立筋群。
- 神経:脊髄神経後枝。
- 血管:肋間動脈背枝、腰動脈背枝。
- 深部構造:椎骨、椎間関節。
東洋医学的作用(要点)
- 疏通経絡: 脊柱両側を通る経脈を疏通し、背腰痛や拘攣を緩解する。
- 調理臓腑: 各椎間部が対応する臓腑の気機を調整する(例:上胸椎=肺・心、中胸椎=脾・胃、腰椎=腎・膀胱)。
- 補虚・瀉実: 臓腑の虚実に応じて補瀉を行うことができる。
- 理気止痛: 背中の気滞や寒湿による疼痛を緩和する。
主な適応症
- 背部痛、腰痛、肩こり
- 脊柱起立筋の拘攣・筋緊張
- 内臓性の関連痛(胃痛・腎痛・月経痛など)
- 月経不順・生理痛・慢性下腹部痛
- 神経症・自律神経失調症
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼方向: やや内方または斜め下方に向けて斜刺。
- 刺入深度: 0.3~0.5寸。
- 注意: 肺尖部(特に上胸椎部位)では気胸防止のため浅刺を徹底。
- 施灸: 温灸または知熱灸を1~3壮。慢性腰痛・冷え・月経痛に有効。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- ① 慢性腰背痛:接脊+腎兪(BL23)+志室(BL52)+大腸兪(BL25)→ 背腰部の筋緊張を緩め、気血の流れを改善。
- ② 月経痛・婦人科疾患:接脊(L2–L4レベル)+次髎(BL32)+子宮(EX-CA1)+三陰交(SP6)→ 下焦の瘀血を除き、経血通調に優れる。
- ③ 胃腸障害(胃脘痛・腹満):接脊(T7–T9レベル)+胃兪(BL21)+中脘(CV12)+足三里(ST36)→ 消化機能を整え、脾胃の気滞を解消する。
- ④ 呼吸器疾患:接脊(T3–T5レベル)+肺兪(BL13)+膈兪(BL17)+列缺(LU7)→ 咳嗽・喘息などに応用。胸背部の気滞を緩める。
古典的背景・文献
- 『奇穴図譜』では「治腰背強痛、婦人経閉」と記される。
- 古来より兪穴と並行して取る補助穴として知られる。
- 清代『医宗金鑑』では「諸痛皆治の背部要穴」として収載。
臨床メモ
- 「接脊」は背部全体の気血流通を促す“調整穴”。
- 肩こりから腰痛まで、脊柱ライン全般の治療に活用できる。
- 背部兪穴と併用すると臓腑調整効果がより明確になる。
- 温灸を加えると慢性疼痛・冷え症に特に効果的。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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