名称
- 和名:下極兪(げきょくゆ)
- 経穴分類:経外奇穴(腰背部)
- 英名:Xiajishu
- 意味:「極兪」とは最も下の兪穴を意味し、腰背部兪穴の中で最下位にあることから名づけられた。
取穴(位置・取り方)
- 第4腰椎棘突起下縁(または第5腰椎棘突起下縁)の高さで、正中線の外方約3寸に取る。
- 腎兪(BL23)よりも下方、志室(BL52)よりやや内側。
- 取穴時は腹臥位で、腰部を軽く伸展させると位置を取りやすい。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋層:広背筋、腰背筋群(脊柱起立筋・多裂筋)。
- 神経:腰神経後枝、坐骨神経分枝。
- 血管:腰動脈背枝。
- 深部構造:第4~5腰椎横突起、仙骨上縁。
東洋医学的作用(要点)
- 補腎益精: 腎気を補い、生殖機能や泌尿器機能を強化する。
- 調理膀胱: 排尿障害・残尿感・頻尿などの調整に用いる。
- 利腰膝: 腰腿痛を和らげ、脚力を回復させる。
- 活血止痛: 血行を促進し、下焦の疼痛を緩和する。
主な適応症
- 腰痛、坐骨神経痛
- 排尿障害(小便不利、遺尿、尿閉、頻尿など)
- 生殖器疾患(陽痿、早泄、月経不順、不妊症など)
- 下腹部痛、子宮下垂、冷え性
- 脚気・下肢の脱力や冷感
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼方向: 内下方またはやや斜め内方に向けて斜刺。
- 刺入深度: 0.8~1.2寸(体格に応じて調整)。
- 注意: 深刺しすぎると腎臓・大血管に影響する恐れがあるため、垂直刺は避ける。
- 施灸: 温灸または隔物灸を1~3壮。冷え・腰下肢痛に特に有効。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- ① 腰痛・坐骨神経痛:下極兪+腰眼(EX-B7)+大腸兪(BL25)+環跳(GB30)→ 腰臀部〜下肢の経絡を疏通し、疼痛緩解。
- ② 膀胱・排尿障害:下極兪+膀胱兪(BL28)+中極(CV3)+三陰交(SP6)→ 膀胱気化の調整・腎気の補益に優れる。
- ③ 性機能低下・陽痿:下極兪+命門(GV4)+腎兪(BL23)+関元(CV4)→ 腎陽を温め、精気を充実させる。
- ④ 月経不順・婦人科疾患:下極兪+次髎(BL32)+子宮(EX-CA1)+気海(CV6)→ 血海を調え、経血の通調を図る。
古典的背景・文献
- 『奇穴図譜』:「治腰脚痛、婦人経閉不通、膀胱不利」
- 『医宗金鑑』:「下焦の要穴、腎・膀胱の気を和す」と記される。
- 背部兪穴の中で最下部にあり、“腎・膀胱の最も深き処”を調えるとされる。
臨床メモ
- 「下極兪」は腰部兪穴群の“最下の要”。腎気を補い、下焦(泌尿・生殖・腰部)を総合的に調整。
- 腰腿痛や冷えに対して温灸を加えると特に効果的。
- 腎兪・志室・命門との併用で、精気を補し全身の活力を高める。
- 婦人科・泌尿器科領域の「万能穴」としても知られる。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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