名称
- 和名:腰眼(ようがん)
- 経穴:経外奇穴(腰部)
- 英名:Yaoyan (EX-B7)
- 別名:腰眼穴、腰の目、腰明(ようめい)
取穴(位置・取り方)
- 第4腰椎棘突起下縁(腰陽関・GV3)の外方3.5~4寸に取る。
- 腸骨稜の最上点と第4腰椎棘突起を結ぶ線の外端にある陥凹部。
- 腰部で最も代表的な圧痛・反応点の1つであり、左右1穴ずつ存在する。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋層:広背筋、腰方形筋、大殿筋の上縁部。
- 神経:腰神経後枝、腸骨下腹神経、腸骨鼠径神経の枝。
- 血管:腰動脈・静脈の枝。
- 関連臓器:腎、腰椎、骨盤内臓。
東洋医学的作用(要点)
- 補腎強腰: 腎気を補い、腰脚の力を回復する。
- 活血止痛: 気血の流れを促し、腰部・下肢の痛みを除く。
- 調経利水: 婦人科疾患や排尿障害にも応用される。
主な適応
- 慢性腰痛、坐骨神経痛、腰部筋膜炎。
- 腎虚による腰脚のだるさ、疲れ、倦怠感。
- 月経痛、帯下、不妊症などの婦人科疾患。
- 排尿困難、頻尿、遺尿、腎炎。
- 腰椎症、ぎっくり腰、腰部冷え。
古典的記載・由来
- 『医宗金鑑』には「治腰痛不止、腰眼灸百壮」とあり、灸の特効穴として記される。
- 「腰眼」とは、「腰の目」の意。腰部の活力や健康状態を映す場所とされる。
- 古来より「腰の痛みに灸すれば百発百中」と称されるほどの名穴。
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼: 直刺または斜刺 1~1.5寸。刺鍼方向はやや内上方へ向ける。
- 施灸: 艾炷灸3~7壮、または温灸10~15分。
- 注意: 深刺の際は腹腔臓器への影響を避け、体位を安定させる。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- ① 腰痛・坐骨神経痛:腰眼(EX-B7)+腎兪(BL23)+志室(BL52)+大腸兪(BL25)+環跳(GB30) → 腰部~下肢の痛みに最も定番の配穴。慢性腰痛に温灸が特に有効。
- ② 腎虚による腰脚無力:腰眼(EX-B7)+命門(GV4)+腎兪(BL23)+太谿(KI3)+照海(KI6) → 腎陽を補し、腰部のだるさ・冷えを改善。
- ③ 婦人科疾患(帯下・不妊・月経痛):腰眼(EX-B7)+次髎(BL32)+関元(CV4)+三陰交(SP6)+中極(CV3) → 下腹部の血流を促進し、月経調整や骨盤内の冷えに効果的。
- ④ 腰部冷え・腎虚寒証:腰眼(EX-B7)+命門(GV4)+大腸兪(BL25)+気海(CV6)+足三里(ST36) → 冷え性や腰部の寒感に対し、温灸を中心に施術。
- ⑤ ぎっくり腰(急性腰痛):腰眼(EX-B7)+委中(BL40)+崑崙(BL60)+阿是穴 → 筋緊張の緩和と血流改善を図る。患側中心に軽刺激で施術する。
- 臨床メモ:
- 腰部疾患における“反応点”として最も出現頻度が高い。
- 腎兪との中間に位置し、両者を連ねるように取穴すると効果が高い。
- 「腰眼灸百壮」は伝統的な民間療法でも知られ、灸療法に最適な穴。
- 現代でも「腰痛特効穴」の代表として整形外科領域でも注目される。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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