名称
- 和名:十七椎(じゅうしちつい)
- 経穴:経外奇穴(腰部)
- 英名:Shiqizhui (EX-B8)
- 別名:十七椎下、腰中穴、腰痛穴
取穴(位置・取り方)
- 第5腰椎棘突起下(腰陽関・GV3の下方)に取る。
- 第4腰椎と第5腰椎の間(腰椎間隙)のやや下方にある陥凹部。
- 正中線上、仙骨上部に近い位置にあり、腰仙移行部の圧痛点を探って取穴する。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋層:棘上靭帯、棘間靭帯、腰背筋群(多裂筋、最長筋)。
- 神経:腰神経後枝、下臀神経。
- 血管:腰動脈、仙骨外側動脈の枝。
- 関連臓器:腰椎、仙椎、脊髄馬尾、腎臓、膀胱経走行部。
東洋医学的作用(要点)
- 補腎強腰: 腎気を補い、腰・脊柱の力を高める。
- 通絡止痛: 経絡の滞りを除き、腰部の気血循環を改善。
- 調経利下焦: 下腹部や骨盤内の循環を整え、婦人科疾患にも応用。
主な適応
- 腰痛、坐骨神経痛、腰椎ヘルニア。
- 下肢のしびれ、下肢筋力低下。
- 排尿障害、月経痛、帯下、不妊症。
- 仙腸関節炎、腰部冷え、腰椎変形。
古典的記載・由来
- 『鍼灸甲乙経』や『医宗金鑑』などに類似部位の記載あり。
- 「十七椎」は、上から数えて17番目の椎骨(第5腰椎)に相当するためこの名がある。
- 古来より「腰痛の奇穴」として、灸法による顕著な効果が報告されている。
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼: 直刺 0.5~1寸(深刺は1.5寸まで可)。
- 施灸: 艾炷灸3~7壮、または温灸10~15分。
- 注意: 深刺しすぎると脊柱管への影響があるため、角度・深度に注意する。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- ① 腰痛・坐骨神経痛:十七椎(EX-B8)+腰眼(EX-B7)+腎兪(BL23)+志室(BL52)+環跳(GB30) → 下腰部~下肢の放散痛に最も定番の組み合わせ。温灸と組み合わせると鎮痛効果が高い。
- ② 腎虚による慢性腰痛:十七椎(EX-B8)+命門(GV4)+腎兪(BL23)+太谿(KI3) → 腎陽を補い、腰部の冷え・だるさ・慢性的な疲労感を改善。
- ③ 婦人科疾患:十七椎(EX-B8)+次髎(BL32)+中極(CV3)+三陰交(SP6) → 骨盤内の血流改善、月経不順・月経痛・不妊への応用がある。
- ④ 腰椎ヘルニア・神経根圧迫:十七椎(EX-B8)+大腸兪(BL25)+委中(BL40)+崑崙(BL60) → 腰椎由来の神経痛に用いられる。腰部の牽引的刺激として軽い電鍼も有効。
- ⑤ 腰仙移行部のこわばり・冷え:十七椎(EX-B8)+命門(GV4)+気海(CV6)+足三里(ST36) → 下焦の寒滞・腎陽虚に対し温補し、腰の冷えを和らげる。
- 臨床メモ:
- 腰部正中の圧痛点として最も出現しやすい場所。
- 「腰眼」は外側の反応点、「十七椎」は中央の中心点として補完関係にある。
- 腰椎5番と仙骨の間(腰仙関節部)は、構造的にも可動域が大きく、治療上重要な要点。
- 灸法がとくに効果的で、慢性腰痛には“十七椎灸七壮”が古来の処方。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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