名称
- 和名:腰奇(ようき)
- 経穴:経外奇穴(腰部)
- 英名:Yaoyi (EX-B9)
- 別名:腰痛点、腰中奇穴、腰仙点
取穴(位置・取り方)
- 第4腰椎棘突起と第5腰椎棘突起の間(または第5腰椎棘突起下縁)の外1寸に取る。
- 腰部の正中線(督脈)から約1寸外側、腰部仙骨上縁付近の陥凹部。
- 多くの場合、「十七椎(EX-B8)」のやや外側に圧痛点があり、そこを取穴する。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋層:広背筋、最長筋、多裂筋。
- 神経:腰神経後枝、下臀神経。
- 血管:腰動脈、仙骨外側動脈。
- 関連部位:腰椎5番、仙骨上縁、腰仙関節部。
東洋医学的作用(要点)
- 補腎強腰: 腎気を補い、腰や仙部の機能を強化。
- 舒筋活絡: 経絡を通し、腰臀部・下肢のこわばりや痛みを除く。
- 理気調経: 下焦の気血のめぐりを整え、月経不調や帯下に用いる。
主な適応症
- 急・慢性腰痛、坐骨神経痛。
- 腰部のだるさ・こわばり。
- 月経痛、月経不順、不妊症、帯下。
- 仙腸関節炎、腰椎椎間板ヘルニア。
古典的記載・由来
- 古来「腰痛奇穴」として知られ、「腰に奇功あり」から名付けられたと伝わる。
- 明代の医書『鍼灸聚英』には「腰痛を療する奇穴」として記述。
- 腰眼・十七椎と並び、腰痛の“三大奇穴”と称される。
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼: 直刺または斜刺 0.5〜1.2寸。
皮下から多裂筋層まで達する程度。刺入方向はやや内下方に向けると響きが良い。 - 施灸: 艾炷灸3〜7壮、または温灸10〜15分。冷え・腎虚・慢性腰痛に有効。
- 注意: 深刺しすぎると脊椎や神経に接触する恐れがあるため、角度を浅めにする。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- ① 腰痛・坐骨神経痛:腰奇(EX-B9)+腰眼(EX-B7)+十七椎(EX-B8)+腎兪(BL23)+志室(BL52) → 腰部中央から外側までバランス良く刺激できる。慢性腰痛や椎間板ヘルニアに適す。
- ② 冷えを伴う慢性腰痛:腰奇(EX-B9)+命門(GV4)+気海(CV6)+太谿(KI3) → 腎陽を補い、腰部の冷え・倦怠感を改善。温灸を併用するとさらに効果的。
- ③ 婦人科疾患(下腹部痛・月経不順):腰奇(EX-B9)+次髎(BL32)+中極(CV3)+三陰交(SP6) → 子宮・卵巣周囲の血流を促し、気滞血瘀による月経痛に応用。
- ④ 下肢放散痛・坐骨神経痛:腰奇(EX-B9)+環跳(GB30)+殷門(BL37)+承山(BL57) → 腰から大腿・下腿後面にかけての放散痛に有効。響きを下肢に伝えると良い。
- ⑤ 腰のこわばり・可動制限:腰奇(EX-B9)+大腸兪(BL25)+委中(BL40)+崑崙(BL60) → 経筋の緊張緩和、腰背部の柔軟性回復に効果的。
- 臨床メモ:
- 腰部正中からわずかに外側の圧痛点として現れやすい。
- 「腰眼」は外側、「十七椎」は正中、「腰奇」はその中間的な位置にある。
- 灸法で温補効果を高めると、腰痛の再発予防にも有効。
- 女性では婦人科領域(生理痛・冷え症)に対して著効を示す場合がある。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
0 件のコメント:
コメントを投稿