名称
- 和名:痞根(ひこん)
- 経穴:経外奇穴(背部)
- 英名:Pigen (EX-B4)
- 別名:胃根、胃の根の穴
取穴(位置・取り方)
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋層:広背筋、最長筋、腰腸肋筋。
- 神経:腰神経後枝。
- 血管:腰動脈後枝。
- 関連臓器:胃・脾・腸などの消化器系。
東洋医学的作用(要点)
- 健脾和胃: 胃脾の機能を調整し、食滞・胃気の滞りを除く。
- 消積導滞: 胃腸に停滞した飲食物を消化・排出させる。
- 理気止痛: 腹満・腹痛・膨張感を緩和する。
- 安神寛胸: 胸やみぞおちのつかえ、情緒的ストレスの緩和にも効果。
主な適応
- 胃痛、胃炎、消化不良、胃下垂。
- 腹部膨満、鼓腸、食欲不振、嘔吐。
- 慢性胃腸障害、腸の蠕動不全。
- 糖尿病、肥満、脾虚による倦怠感。
- ヒステリー、神経性胃炎など精神的緊張を伴う消化症状。
古典的記載・由来
- 『奇穴類編』に「治胃気不和、心下痞満、食滞不消」とある。
- 「痞根」とは、胸腹の痞え(つかえ)の根を治す意である。
- 古来より胃腸疾患、特に慢性の食積や停滞に効くとされ、「胃脘下兪」と並び称される。
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼: 直刺または斜刺 0.5~1寸。深刺は避け、骨際まで軽く刺入。
- 施灸: 艾炷灸3~7壮、または温灸5~10分。慢性消化器疾患には温灸が特に有効。
- 注意: 深刺すると腰部筋膜炎などの刺激となる場合があるため、柔らかく刺す。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- ① 胃腸障害・腹部膨満:痞根(EX-B4)+中脘(CV12)+天枢(ST25)+足三里(ST36)+内関(PC6) → 食滞・膨満感・胃もたれ・消化不良に有効。 特に「みぞおち~下腹に張りを訴える」患者に反応点として出やすい。
- ② 胃炎・胃下垂:痞根(EX-B4)+胃脘下兪(EX-B3)+脾兪(BL20)+胃兪(BL21)+関元(CV4) → 胃の位置と機能を整え、胃下垂・食欲不振を改善する。
- ③ 糖尿病・代謝障害:痞根(EX-B4)+胃脘下兪(EX-B3)+三陰交(SP6)+陰陵泉(SP9)+腎兪(BL23) → 脾胃腎を同時に補し、生津・代謝を促進する古典的組合せ。
- ④ 情動ストレス・ヒステリー様症状:痞根(EX-B4)+内関(PC6)+膻中(CV17)+神門(HT7)+百会(GV20) → 精神的な緊張や不安が原因の胃部圧迫感や胸のつかえに効果的。
- ⑤ 慢性疲労・気虚体質:痞根(EX-B4)+脾兪(BL20)+腎兪(BL23)+命門(GV4)+気海(CV6)→ 気血の循環を促し、体力の底上げを行う。
- 臨床メモ:
- 「痞根」は、名の通り「痞(つかえ)」の根を治す。
- 胃脘下兪よりやや下方・外側に位置し、胃腸機能低下の体質に見られる圧痛点。
- 灸療法を中心に用いると、慢性胃炎・食欲不振・膨満感に極めて有効。
- 糖尿病治療では、胃脘下兪とセットで施術するのが定番。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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