名称
- 和名:胃脘下兪(いかんかゆ)
- 経穴:経外奇穴(背部)
- 英名:Weiwanxiashu (EX-B3)
- 別名:胃兪下、胃下兪、糖尿穴(とうにょうけつ)
取穴(位置・取り方)
- 第8胸椎棘突起下縁(脊中のレベル)から、外方1.5寸に取る。
- 正中線上の脊中(GV6)の外方1.5寸にあたる部位。
- 左右1穴ずつ存在する。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋肉:僧帽筋、広背筋、最長筋。
- 神経:胸神経後枝(第8胸神経)。
- 血管:肋間動脈後枝。
- 関連臓器:胃、膵臓、横隔膜の機能と関係深い。
東洋医学的作用(要点)
- 健脾和胃: 脾胃の機能を調整し、消化を助ける。
- 清熱生津: 胃熱・内熱を除き、津液の不足を改善する。
- 調中降逆: 嘔吐や胃の気上逆を鎮める。
- 滋陰止渇: 陰液不足による口渇・多飲に有効。
主な適応
- 糖尿病(消渇症)、口渇多飲、頻尿。
- 胃炎、胃酸過多、胃痛、消化不良、嘔吐。
- 慢性膵炎、胃下垂、食欲不振。
- 心窩部の灼熱感、胸やけ。
古典的記載・由来
- 『奇穴類編』などに記載され、「主治消渇(糖尿病様症状)」とある。
- 「胃脘の下に在り、胃気の滞りを除く」とされる。
- 古くは「渇症(喉の渇き・多尿)」に特効とされ、内熱による消耗性疾患に多く用いられた。
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼: 斜刺または直刺 0.5~0.8寸。深刺しすぎないよう注意。
- 施灸: 艾炷灸3~5壮、温灸5~10分。糖尿病など慢性疾患には温灸が有効。
- 注意: 胸腔近くのため深刺を避け、浅めの斜刺とする。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- ① 糖尿病・消渇症:胃脘下兪(EX-B3)+三陰交(SP6)+陰陵泉(SP9)+太谿(KI3)+脾兪(BL20)+腎兪(BL23)→ 陰虚内熱を冷まし、生津を促して口渇・多尿・倦怠を改善。 古来より「糖尿病の定穴」として知られる。
- ② 胃炎・胃痛:胃脘下兪(EX-B3)+中脘(CV12)+足三里(ST36)+内関(PC6)+公孫(SP4)→ 胃気を調え、逆気や嘔吐、胃の灼熱感を抑える。
- ③ 慢性膵炎:胃脘下兪(EX-B3)+脾兪(BL20)+胃兪(BL21)+中脘(CV12)+梁門(ST21)→ 胃脾の働きを整え、膵臓炎症を鎮め、消化吸収力を回復する。
- ④ 胃下垂・食欲不振:胃脘下兪(EX-B3)+天枢(ST25)+気海(CV6)+足三里(ST36)→ 脾胃を温めて運化を促進し、食欲を高める。
- ⑤ 慢性疲労・内熱体質:胃脘下兪(EX-B3)+大椎(GV14)+腎兪(BL23)+太谿(KI3)+百会(GV20)→ 気血の流れを整え、体内の過剰な熱と虚のバランスを調整。
- 臨床メモ:
- 胃脘下兪は、胃兪(BL21)の下方に位置し、胃および膵臓の調整点として極めて重要。
- 慢性疾患(糖尿病・胃弱体質)では、灸治療を中心に長期的に刺激するのが効果的。
- 患者が「みぞおちの下がつかえる」「熱感がある」と訴える場合に反応点として現れやすい。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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