名称
- 和名:蘭尾(らんび)
- 経穴:経外奇穴(下肢)
- 英名:Lan Wei (EX-LE7)
- 別名:蘭尾穴、蘭尾点
取穴(位置・取り方)
- 下腿前外側部、足三里(ST36)の下方約2寸、脛骨前稜の外側陥凹部に取る。
- 足三里から指2本分下の圧痛点を求めて取穴する。
- 多くの場合、急性虫垂炎の際に著明な圧痛を示す。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋肉:前脛骨筋の外側部または長腓骨筋の前縁。
- 神経:浅腓骨神経、前脛骨神経分枝。
- 血管:前脛骨動脈・静脈の分枝。
東洋医学的作用(要点)
- 清熱解毒: 体内の熱毒を除き、炎症性疾患に用いる。
- 理気止痛: 下腹部の気滞を解き、疼痛を軽減する。
- 調腸化湿: 腸内の湿熱を取り除き、下腹部の腫脹・疼痛を改善する。
主な適応
- 急性・慢性虫垂炎(盲腸炎)。
- 右下腹部痛、回盲部の炎症。
- 腸の湿熱、腹部膨満。
- 下肢外側部の筋攣・神経痛。
古典的記載・由来
- 『奇穴類編』などの後世書に記載され、虫垂炎(当時の「蘭尾炎」)に特効があると伝えられた。
- 「蘭尾」とは虫垂(盲腸の突起部)を意味し、この穴を刺激することで右下腹部の炎症を鎮めるとされた。
- 臨床的には圧痛の強さが虫垂炎の活動性と相関することが多い。
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼: 直刺 1〜1.5寸。強い得気を避け、軽度刺激を保つ。
- 灸法: 艾炷灸3〜5壮または温灸可。腹部炎症期には温灸を控えることもある。
- 注意: 虫垂炎が急性で腹膜刺激症状が強い場合は、速やかに医療機関を受診すること。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- 蘭尾穴は、主に虫垂炎(盲腸炎)の治療・緩解に用いられる経外奇穴であり、臨床上は「腹部炎症反応点」としても利用されます。 胆嚢点(EX-LE6)と並び、内臓の反応性奇穴として診断・治療の両面で重要です。
- ① 急性虫垂炎(軽症・慢性期):蘭尾(EX-LE7)+天枢(ST25)+気海(CV6)+足三里(ST36)→ 腸の蠕動を整え、炎症を鎮め、疼痛を和らげる。
- ② 腹部膨満・便秘:蘭尾(EX-LE7)+大腸兪(BL25)+上巨虚(ST37)+合谷(LI4)→ 腸内の停滞を除き、排便を促す。
- ③ 下腹部痛・婦人科系炎症:蘭尾(EX-LE7)+関元(CV4)+次髎(BL32)+三陰交(SP6)→ 骨盤部の血流を促し、炎症性疼痛を軽減。
- ④ 右下腹部圧痛がある場合の診断的応用:右下腹部に圧痛があり、蘭尾穴にも強い圧痛が見られる場合は、虫垂・盲腸部の機能異常を疑う。 圧痛が軽減していくことで炎症の回復傾向を確認する補助的指標となる。
- ⑤ 予防・体質改善:慢性便秘・腸内ガス貯留のある体質に対して、足三里とともに定期的に施灸すると良い。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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