名称
- 和名:肩内陵(けんないりょう)
- 経穴分類:経外奇穴(上肢部・肩部)
- 英名:Jiān Nèi Líng
- 意味:「肩外陵」に対して肩の内側陵部(隆起部)に位置することから名づけられた。
取穴(位置・取り方)
- 肩関節の前面で、肩髃(LI15)と腋窩横紋前端との中点に取る。
- 肩関節を軽く屈曲・外転すると、三角筋前部と上腕二頭筋長頭腱の間に陥凹が現れる。その部に取穴する。
- 肩外陵が肩関節の外側隆起部にあるのに対し、肩内陵は内前方の隆起部に位置する。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋層:三角筋前部、上腕二頭筋長頭腱、烏口腕筋。
- 神経:腋窩神経、筋皮神経。
- 血管:前上腕回旋動脈、三角筋枝。
東洋医学的作用(要点)
- 疏経活絡: 経絡を通じて肩関節周囲の滞りを解消し、運動を回復する。
- 祛風除湿: 風寒湿による関節痛・拘縮を取り除く。
- 理気止痛: 気滞・血瘀による肩痛・上腕痛を緩解する。
主な適応症
- 肩関節周囲炎(五十肩)
- 上腕神経痛
- 上肢挙上困難
- 肩前部痛、腕の重だるさ
- 腱板損傷後の可動制限
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼方向: 肩関節の中心(肩峰の方向)へ向けてやや斜刺。
- 刺入深度: 約0.8~1.2寸。
- 施灸: 知熱灸または温灸。慢性の肩痛や冷えのある場合に有効。
- 注意: 深刺し過ぎると関節包に達する恐れがあるため、慎重に行う。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- ① 五十肩・肩関節周囲炎:
- 肩内陵(EX-UE)+肩外陵(LI15近傍)+肩髃(LI15)+肩貞(SI9)+肩髎(TE14)→ 肩関節前後のバランスをとることで可動域を広げる。 特に、肩の前方痛には肩内陵、後方痛には肩外陵が有効。
- ② 上腕前面の放散痛:
- ③ 頑固な肩前部痛・夜間痛:
- ④ 腱板炎や烏口突起部痛:
- 烏口腕筋の緊張緩和を目的に、肩内陵を軽く斜め下方へ刺鍼し、 必要に応じて運動鍼を併用すると効果的。
古典的背景・文献
- 清代『外科正宗』などに類似点の記述があり、肩外陵と対の奇穴として後世に定義。
- 現代臨床では「肩前部痛・五十肩の特効穴」として多くの鍼灸師が活用。
- 一部の古典では「肩前陵」とも表記される。
臨床メモ
- 肩内陵は肩前方の可動域(前挙・屈曲)に特に関与する。
- 肩外陵との対比で、痛みの位置を判断して使い分けると効果的。
- 運動鍼(刺鍼後に軽く肩を動かす)を加えると治効が高まる。
- 冷え・湿邪の関与が強い場合は、灸療法を併用するのがおすすめ。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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