名称
- 和名:落枕(らくちん)
- 経穴分類:経外奇穴(上肢部)
- 英名:Luòzhěn(EX-UE8)
- 意味:「枕から落ちたように首が回らない(寝違え)」症状に特効があることから名づけられた。
取穴(位置・取り方)
- 手背にあり、第二・第三中手骨の間、中手指関節(MP関節)の後方陥凹部に取る。
- 人差し指と中指の骨の間のくぼみで、手を軽く握ったときの陥凹部に相当。
- 指を伸ばした状態よりも、わずかに軽く握った状態で探ると取りやすい。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋層:第2背側骨間筋。
- 神経:橈骨神経浅枝。
- 血管:背側中手動脈網。
東洋医学的作用(要点)
- 舒筋活絡: 筋肉や経絡の緊張・滞りを解消し、気血の流れを回復する。
- 理気止痛: 気滞による痛み・こりを鎮める。
- 清頭明目: 上焦(頭・頚部)の気の流れを整えることで頭部症状を軽減。
主な適応症
- 寝違え(首の急性筋性斜頚)
- 頚部捻挫・頚肩のこり
- 上肢の運動障害・痺れ
- 肩背部痛・肩甲間部痛
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼方向: 手背に直刺、またはやや斜め上方へ向けて刺入。
- 刺入深度: 約0.3~0.5寸(5〜10mm程度)。
- 施灸: 温灸または知熱灸。特に寒湿による寝違えに有効。
- 注意: 神経・血管が浅いため、過度の刺激を避ける。
臨床のコツ・応用例
- ① 寝違え(特効穴):
- 落枕(EX-UE8)を健側の手に取穴するのが一般的。
- 首の痛みが右側なら左手の落枕、左側なら右手の落枕に鍼をする。
- 軽い刺激で即座に頚の可動域が改善する例も多い。
- ② 頚肩こり・肩甲間部痛:
- ③ 上肢痛・麻痺:
古典的背景
- 明代『鍼灸聚英』に初出。
- 「治落枕項不利,手不得挙」と記され、寝違えの特効穴として知られる。
- 近現代でも「落枕」という名称が病名と経穴名を兼ねる唯一の例として著名。
臨床メモ
- 即効性が高く、軽症の寝違えでは1本で改善することも。
- 刺激後、患者に首をゆっくり左右に回させて可動域を確認。
- 慢性期では、天柱・風池・肩井などの上部経穴と併用。
- 反応点を探り、圧痛が最も強い点に取穴すると効果的。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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