夾承漿まとめ:効能・取穴・関連症状

名称

  • 和名:夾承漿(きょうしょうしょう)
  • 経穴分類:経外奇穴(頭頸部)
  • 英名:Jiáchéngjiāng(EX-HN19)
  • 意味:「承漿(CV24)」の両側に位置することから、「夾(はさむ)」の字を冠する。


取穴(位置・取り方)

  • 承漿(CV24)の左右外方0.5~1寸に取る。
  • 下唇の外側で、オトガイ筋の外縁付近、口角の下方にあたる。
  • 軽く口を閉じ、下顎をわずかに上げた状態で探すと取りやすい。


解剖(近接構造)

  • 表層:皮膚、皮下組織。
  • 筋層:口角下制筋、オトガイ筋、広頚筋。
  • 神経:顔面神経下顎縁枝、三叉神経下顎枝(オトガイ神経)。
  • 血管:下唇動脈・オトガイ動脈の枝が分布。


東洋医学的作用(要点)

  • 祛風活絡: 風邪により阻滞した経絡を開き、顔面部の経気を通す。
  • 和顔正口: 顔面の歪み・口角下垂・流涎を改善。
  • 止痛散腫: 局所の痛みや腫脹を鎮める。


主な適応症

  • 顔面神経麻痺(口角下垂・流涎)
  • 歯痛・顎関節痛
  • オトガイ部のしびれ
  • 美容鍼でのリフトアップ(口角部の引き上げ)


刺鍼法・施灸法

  • 刺鍼方向: 承漿(CV24)または口角に向けてやや斜め内上方に斜刺。
  • 刺入深度: 約0.3~0.7寸(5〜15mm程度)。オトガイ筋層に軽く刺入。
  • 施灸: 知熱灸や温灸が可。冷え・慢性麻痺に適す。
  • 注意: 顔面神経枝が走行するため、深刺・強刺激を避ける。


臨床のコツ・応用例

  • ① 顔面神経麻痺:夾承漿(EX-HN19)+承漿(CV24)地倉(ST4)頬車(ST6) → 口角下垂・流涎・顔面の非対称を改善。口部の経絡疏通を助ける。
  • ② 歯痛・顎関節炎:夾承漿(EX-HN19)+下関(ST7)頬車(ST6) → 顎関節周囲の血流改善と疼痛軽減に有効。
  • ③ 美容鍼応用:夾承漿(EX-HN19)を軽刺激で用いることで、口角リフトアップ・フェイスライン引き締め効果が期待できる。



古典的背景

  • 『鍼灸甲乙経』には未収だが、明・清代以降の医家によって記載。
  • 特に『鍼灸聚英』において「治口喎(こうわ:口の歪み)特効」として紹介。
  • 顔面経筋の緊張を調え、陰陽の偏りを正す補助穴として重用された。


臨床メモ

  • 急性期:翳風(TE17)地倉(ST4)牽正(EX-HN20)と併用。
  • 慢性期:温灸・低周波鍼通電で筋の再教育を促す。
  • 美容鍼:左右均等に配穴し、表情筋トーニングを意識。
  • 刺激後の表情変化を鏡で確認しながら調整すると効果的。

※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。

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