名称
- 和名:下関(げかん)
- 経穴:足の陽明胃経(ST7)
- 英名:Xiaguan (ST7)
取穴(位置・取り方)
- 顔面部、頬骨弓下縁の陥凹部、下顎関節突起の前方に取る。
- 耳珠の前方、口を開けると陥凹が現れる部位で確認しやすい。
- 頬車(ST6)のやや上方に位置する。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋肉:咬筋、外側翼突筋。
- 神経:顔面神経の枝、下顎神経(V3)の枝。
- 血管:顔面動脈・静脈、浅側頭動脈の枝。
東洋医学的機能(古典的記載)
- 耳目口を調える:耳鳴・難聴・顎関節症状に応用された。
- 経気を通じさせる:局所の気血を疏通し、顔面部の麻痺や痛みに用いられた。
- 口噤・咀嚼障害を改善する:顎関節や咀嚼筋の緊張緩和に関連づけられた。
古典的応用例
- 耳疾患 – 『鍼灸甲乙経』では耳聾(難聴)、耳鳴に対して取穴が記されている。 – 『備急千金要方』では、耳の閉塞感や中耳炎に類する症状に応用例が見られる。
- 顎関節疾患 – 『千金翼方』では口噤(口が開かない状態)、開口障害に用いられたとされる。 – 顎の関節音や痛みに対しても補助穴として記載がある。
- 顔面疾患 – 『鍼灸聚英』には、口眼喎斜(顔面神経麻痺)に下関を使用するとの記録がある。 – 三叉神経痛様の顔面痛や咀嚼時痛にも関連する応用が示されている。
- 歯痛 – 『鍼灸甲乙経』に、歯痛の際に有効とされる記載がある。 – 特に下顎・上顎臼歯部の疼痛に用いられた。
- 頭痛・偏頭痛 – 顔面と耳の症状を伴う頭痛に応用された例があり、側頭部・顎関節部の痛みに使われた。
刺鍼法(古典的記載・参考)
- 刺入方向:直刺またはやや前下方に向けて刺入。
- 刺入深度:0.5〜1.0寸程度。
- 注意点:顔面神経や血管に近接するため、強刺は避ける。口を軽く開けた状態で刺鍼するのが望ましい。
※本まとめは古典的記載をもとにした教育的資料です。実際の施術は必ず有資格者の判断のもとで行ってください。
禁忌・注意
- 深刺により血管や神経を損傷する危険があるため注意。
- 急性炎症(耳下腺炎や化膿性疾患)のある場合は刺鍼を避ける。
- 清潔操作を徹底すること。
臨床のコツ・組み合わせ(古典的視点)
- 耳疾患:聴会(GB2)、聴宮(SI19)、耳門(TE21)と組み合わせ、耳鳴・難聴に応用。
- 顎関節症:頬車(ST6)、合谷(LI4)と併用し、咀嚼筋と顎関節の調整を図る。
- 顔面神経麻痺:地倉(ST4)、四白(ST2)とあわせ、局所の気血を活性化。
- 歯痛:合谷(LI4)と併用して鎮痛効果を狙う。
- 偏頭痛・側頭部痛:風池(GB20)と連携して頭部気血の巡りを調整。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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