承漿まとめ:効能・取穴・関連症状

名称

  • 和名:承漿(しょうしょう)
  • 経穴:任脈(CV24)
  • 英名:Chéngjiāng (CV24)


取穴(位置・取り方)

  • 顔面部、オトガイ唇溝の中央で、下唇の下方の陥凹部に取る。
  • 下唇と顎の境界にできる横溝(オトガイ唇溝)の正中点。
  • 下顎骨の上縁に触れる位置にある。


解剖(近接構造)

  • 皮下にオトガイ筋・下唇下動脈・静脈分枝が走行。
  • 支配神経:顔面神経下顎枝、下歯槽神経(オトガイ神経)。
  • 血管:下唇下動脈、オトガイ動脈分枝。


東洋医学的作用(要点)

  • 開竅醒神 顔面・口唇の経気を通じ、意識を明らかにする。
  • 清熱化痰 熱や痰による口周囲の腫脹・麻痺を治す。
  • 利口喉 唇・舌・喉の異常を改善。


主な適応

  • 口歪み(顔面神経麻痺)、口のしびれ、唇のけいれん。
  • 唾液過多(流涎)、口渇、舌根のこわばり。
  • 歯痛、下歯槽痛、歯肉腫痛。
  • 精神不安、癲癇(てんかん)、意識混濁。
  • 下唇の腫れ、口内炎。


古典的記載・応用例

  • 『霊枢・邪客篇』:「承漿は唇を主る。」
  • 『鍼灸甲乙経』:「口僻(こうへき)、唇急、涎出を治す。」
  • 『銅人腧穴鍼灸図経』:「口噤、歯痛、唇腫、口僻を治す。」とあり、顔面下部の諸疾患に広く応用。


刺鍼法・施灸法

  • 刺鍼: 斜め上方に向けて 0.3〜0.5寸刺入。 下顎骨に沿って浅く刺す。深刺・直刺は避ける。
  • 灸法: 艾炷灸1〜3壮または温灸。冷えによる唇の痺れ・麻痺に用いる。
  • 注意: 顔面神経や血管の損傷を避ける。感染予防のため清潔操作を厳守。


臨床のコツ・刺鍼コンビネーション

  • 承漿(CV24)は任脈の最上位経穴で、顔面の「水(津液)」の出入り口に相当します。 「承」は“受ける”、“漿”は“唾液”を意味し、津液や唾液、顔面の気血を調整する要穴です。
  • ① 顔面神経麻痺(口歪み・口角下垂):承漿(CV24)+地倉(ST4)頬車(ST6)合谷(LI4)→ 局所と遠隔を組み合わせ、口唇周囲の運動機能回復を促す。
  • ② 流涎(唾液過多・涎垂):承漿(CV24)+廉泉(CV23)風池(GB20)太谿(KI3)→ 津液代謝を整え、脾腎の虚による流涎を改善。
  • ③ 歯痛・下顎痛:承漿(CV24)+頬車(ST6)合谷(LI4)下関(ST7)→ 歯痛・下顎の炎症・知覚異常に良好。
  • ④ 精神不安・意識混濁:承漿(CV24)+水溝(GV26)百会(GV20)内関(PC6)→ 開竅醒神作用により、気絶・卒中後の応急にも応用される。
  • ⑤ 唇の腫れ・しびれ:承漿(CV24)+迎香(LI20)合谷(LI4)太衝(LR3)→ 気血の滞りによる局所浮腫や麻痺に有効。
  • 承漿は任脈と足陽明胃経・足陽蹻脈の交会穴でもあり、 「口周の麻痺」「唾液異常」「精神的緊張による口周症状」に対して幅広く応用されます。 顔面神経麻痺や口内トラブルの治療では、ほぼ必ず選穴される重要な顔面部経穴です。


※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。

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