中府まとめ:効能・取穴・関連症状

名称

  • 和名:中府(ちゅうふ)
  • 経穴:手の太陰肺経(LU1)・募穴(肺の募穴)
  • 英名:Zhongfu (LU1)


取穴(位置・取り方)

  • 胸部、第1肋間にあり、鎖骨下窩の外方で烏口突起の下、前正中線から外方6寸。
  • 雲門(LU2)のやや内下方に位置する。
  • 呼吸器疾患において最も重要な経穴のひとつであり、肺経の募穴として肺の症状全般に応用される。


解剖(近接構造)

  • 表層:皮膚・皮下組織・大胸筋。
  • 神経・血管:鎖骨下動脈・胸肩峰動脈、肋間神経。
  • 深部臓器:肺尖部(気胸に注意)。


東洋医学的機能(要点)

  • 宣肺理気:咳嗽・胸満・呼吸困難。
  • 止咳化痰:痰の停滞による胸部の閉塞感を改善。
  • 調和胸中:胸痛・肩前部の痛みに。
  • 募穴作用:肺の臓腑疾患全般に適応。


臨床応用(呼吸器・胸部疾患を中心に)

  • 急性・慢性の咳嗽や喘息発作には、中府(LU1)を雲門(LU2)や太淵(LU9)と組み合わせ、肺気の発散を助けます。痰が多い場合は豊隆(ST40)を加えて化痰を強化します。
  • 胸痛や胸のつかえ感には、中府(LU1)を内関(PC6)膻中(CV17)と組み合わせ、胸中の気機を調整します。ストレス性の胸部不快感にも応用できます。
  • 肩前部から胸にかけての痛みでは、中府(LU1)を肩井(GB21)や天宗(SI11)とあわせ、局所の血流改善をはかります。
  • 慢性気管支炎や体質性の喘息には、中府(LU1)を腎兪(BL23)足三里(ST36)と組み合わせて肺腎を補い、虚弱体質改善を図ります。



刺鍼法(安全重視)

  • 推奨針サイズ:直径0.18–0.22mm、長さ30–40mm。
  • 刺入方向と深さ
    • 大胸筋に沿って斜めに刺入、0.5–0.8寸程度。
    • 胸腔内(特に肺尖部)を避けるため、直刺は厳禁。
  • 保持時間:10–15分。咳嗽や喘息の発作時には短時間の瀉法も応用可。
  • 灸法:温灸で冷えや虚弱による咳嗽に有効。


禁忌・注意

  • 気胸を避けるため、深刺・直刺は厳禁。
  • 胸部に外傷や皮膚疾患がある場合は避ける。
  • 重度の呼吸困難を伴う患者は、まず医療機関での処置を優先。


臨床のコツ・刺鍼コンビネーション

  • 咳嗽や喘息では、中府(LU1)に太淵(LU9)豊隆(ST40)をあわせ、肺気の宣発と痰の除去を行います。痰湿タイプに特に有効です。
  • 胸の圧迫感やストレス性の胸痛には、中府(LU1)と内関(PC6)膻中(CV17)を併用し、胸中の気滞を解消します。精神的緊張が強い場合にも有効です。
  • 慢性気管支炎・体質性喘息には、中府(LU1)を腎兪(BL23)足三里(ST36)と組み合わせ、肺腎を補う補法を中心に施術します。虚弱体質の改善に適しています。
  • 肩前部痛や胸郭出口症候群様の症状では、中府(LU1)と肩井(GB21)、天宗(SI11)をあわせて局所循環を改善し、肩前部から胸にかけての放散痛を軽減します。


※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。

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