名称
- 和名:翳明(えいめい)
- 経穴:経外奇穴(頭頸部)
- 英名:Yiming (EX-HN14)
取穴(位置・取り方)
- 乳様突起の後縁、翳風(TE17)の後方約1寸に取る。
- 耳介の後方で、後頭骨と胸鎖乳突筋の間のくぼみに位置する。
- 左右対称に存在し、耳の後方を軽く押さえて圧痛のある点を取穴する。
解剖(近接構造)
- 皮膚・皮下組織・胸鎖乳突筋後縁・乳様突起下部。
- 神経:小後頭神経、耳介後神経。
- 血管:耳介後動脈、後頭動脈の分枝。
東洋医学的作用(要点)
- 清頭明目: 頭部の気血を清め、視力を明らかにする。
- 聡耳開竅: 耳の通りを良くし、聴覚を回復させる。
- 安神定志: 心神を安定させ、めまいや不眠を鎮める。
主な適応
- 耳鳴、難聴、中耳炎。
- 眼精疲労、視力減退、仮性近視。
- めまい、頭痛、頸部のこり。
- 不眠、神経衰弱、自律神経失調。
- 耳の周囲の神経痛、顔面神経麻痺の補助治療。
古典的記載・由来
- 「翳明」は『鍼灸甲乙経』など古典には見られず、後世の奇穴として定義された。
- 名称の「翳」は“かすむ”、“障る”という意味、「明」は“明らか”を意味し、 すなわち「目や耳の翳(障り)を除き明らかにする」意から名付けられた。
- 古来より「耳と目の通路を開き、頭の清明を取り戻す穴」とされる。
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼: 直刺またはやや斜めに0.5〜1寸。
耳介後方からやや前下方または内方に向けて刺す。 - 灸法: 艾炷灸3壮、または温灸5〜10分。
- 注意: 深刺により乳様突起後部の血管・神経を損傷しないよう留意。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- ① 耳鳴・難聴:翳明(EX-HN14)+聴宮(SI19)+聴会(GB2)+翳風(TE17) → 聴覚経路の気血を通し、耳鳴・閉塞感を改善。
- ② 眼精疲労・視力減退:翳明(EX-HN14)+太陽(EX-HN5)+睛明(BL1)+風池(GB20)→ 頭部の血流を促進し、視神経疲労を回復。
- ③ めまい・頭痛:翳明(EX-HN14)+百会(GV20)+風池(GB20)+太衝(LR3) → 肝陽上亢・気逆を鎮め、平肝潜陽の効果を発揮。
- ④ 不眠・神経緊張:翳明(EX-HN14)+神門(HT7)+安眠(EX-HN16)+内関(PC6) → 頭部の気を降ろし、精神の鎮静を図る。
- ⑤ 顔面神経麻痺:翳明(EX-HN14)+地倉(ST4)+頬車(ST6)+翳風(TE17) → 顔面部の経絡を通じさせ、麻痺部位の血行改善を助ける。
- ⑥ 首・後頭部のこり:翳明(EX-HN14)+天柱(BL10)+風池(GB20)+完骨(GB12) → 後頸部の筋緊張を和らげ、頭重感を軽減する。
- 翳明は耳と目、すなわち「聴覚・視覚・精神のバランス」を整える作用を持つため、 現代臨床でも自律神経症状・ストレス性頭痛・感覚器障害に多く応用されている。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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