名称
- 和名:耳尖(じせん/じせんけつ)
- 経穴:経外奇穴(頭部)
- 英名:Erjian (EX-HN6)
取穴(位置・取り方)
- 耳介の最も高い尖端部に取る。
- 耳を前方に軽く折り曲げたとき、耳の上端がとがる部位が耳尖。
- 左右ともに取穴可能で、主に対称的に用いられる。
解剖(近接構造)
- 皮膚・皮下組織・軟骨。
- 神経:耳介側頭神経の分枝。
- 血管:浅側頭動脈の耳介枝。
東洋医学的作用(要点)
- 清熱瀉火: 熱邪を取り除き、発熱・炎症を鎮める。
- 明目清頭: 頭部や目の熱を除き、頭痛や目の充血を軽減する。
- 鎮痛・鎮静: 熱性頭痛、のぼせ、神経過敏などを緩和する。
主な適応
- 高熱、熱射病、インフルエンザ、頭痛。
- 高血圧による顔面紅潮、耳鳴り、めまい。
- 結膜炎、ものもらい、充血などの眼疾患。
- 咽喉腫痛、扁桃炎。
- 中耳炎、耳鳴、耳痛。
- 高体温を伴う急性炎症(虫刺されや腫脹にも応用)。
古典的記載・由来
- 「耳尖」は『鍼灸甲乙経』などの古典には直接の記載はないが、 後世において耳部の経外奇穴として定義された。
- 民間療法では、耳尖放血によって高熱・高血圧・眼の充血を取る方法が伝承されている。
- 特に「清熱瀉火・頭面の気血を調整する」作用が重視される。
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼: 通常は行わず、微少刺または放血療法として軽く刺して1~2滴の血を出すのが一般的。
- 放血法: 発熱や高血圧、結膜炎などのときに耳尖をアルコール綿で清拭後、 0.3mm程度の三棱針や注射針で軽く刺し、少量の血を出す。
- 灸法: 通常行わないが、慢性の耳疾患では温灸を軽く施すこともある。
- 注意: 出血後は十分な止血を行い、感染予防に留意する。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- 耳尖は、その位置と性質から「頭面部の熱を除く」ことに非常に優れており、 放血や微刺による清熱・降圧・鎮静の効果を発揮する。
- ① 高熱・発熱疾患:耳尖(EX-HN6)+大椎(GV14)+合谷(LI4)+曲池(LI11) → 体表の熱を下げ、発汗と体温調節を促す。
- ② 高血圧・頭痛・顔面紅潮:耳尖(EX-HN6)+太衝(LR3)+風池(GB20)+百会(GV20) → 上衝する気血を下げ、頭部の鬱熱を鎮める。
- ③ 眼疾患(充血・腫脹・炎症):耳尖(EX-HN6)+睛明(BL1)+太陽(EX-HN5)+合谷(LI4) → 目の熱と充血を取り除き、清目作用を高める。
- ④ のぼせ・ストレス・自律神経の乱れ:耳尖(EX-HN6)+内関(PC6)+太衝(LR3)+神門(HT7) → 気の上逆を鎮め、心身の鎮静を図る。
- ⑤ 中耳炎・耳鳴・耳痛:耳尖(EX-HN6)+聴宮(SI19)+聴会(GB2)+翳風(TE17) → 局所の血行を促進し、炎症や鬱血を緩和。
- 耳尖は小さな穴ながら、頭顔面の熱を抜き、全身のバランスを取る「放熱の特効穴」として、 現代臨床でも非常に重宝されている。特に急性熱性疾患や高血圧性頭痛では即効を示すことが多い。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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