中庭まとめ:効能・取穴・関連症状

名称

  • 和名:中庭(ちゅうてい)
  • 経穴:任脈(CV16)
  • 英名:Zhongting (CV16)
  • 別名:中庭穴・心蔵(古名)


取穴(位置・取り方)

  • 前正中線上、剣状突起の下端に取る。
  • 鳩尾(CV15)の上方0.5寸、膻中(CV17)の下方1.5寸に相当する位置。
  • 仰臥して胸部をわずかに伸ばした状態で剣状突起を触れ、その下端の陥凹部に取る。


解剖(近接構造)

  • 皮下には皮膚・皮下組織・白線・剣状突起下端。
  • 深部には横隔膜上部、肝左葉、胃噴門部が近接する。
  • 支配神経:第6肋間神経(T6)の前皮枝。
  • 血管:内胸動脈の終枝が分布。


東洋医学的作用(要点)

  • 寛胸理気: 胸中のつかえ・膈満を除く。
  • 和胃降逆: 胃気の上逆を鎮め、嘔吐・しゃっくりを止める。
  • 清心安神: 心煩・不安・動悸を鎮める。


主な適応

  • 胸苦しさ、胸痛、心窩部痛。
  • 嘔吐、しゃっくり、胃のつかえ。
  • 不安・緊張・ヒステリー傾向。
  • 肋間神経痛、逆流性食道炎。


古典的記載・応用例

  • 『鍼灸甲乙経』:「中庭主心痛、嘔逆、膈満を治す。」
  • 『千金方』:「心下急満、噎膈を治す。」
  • 『銅人腧穴鍼灸図経』:「膈間の熱、胸痛、驚悸を主る。」
  • 古典では鳩尾とともに「心下満・膈満」の要穴として、横隔膜付近の気滞を調整する目的で多用された。


刺鍼法・施灸法

  • 刺鍼: 斜刺または下方斜刺 0.3〜0.5寸。
  • 禁忌: 深刺は心臓や肝臓を損傷する恐れがあるため厳禁。
  • 灸法: 艾炷灸3〜5壮または温灸。冷えを伴う胸満・胃部不快に良い。


臨床のコツ・刺鍼コンビネーション

  • 中庭(CV16)は鳩尾(CV15)膻中(CV17)の間に位置し、 「横隔膜の調整点」として心下・胸部・胃上部のつかえに用いられます。 感情性ストレスによる胸の圧迫感や呼吸の浅さなどにも有効です。
  • ① 胸のつかえ・膈満:中庭(CV16)+膻中(CV17)期門(LR14)内関(PC6)→ 肝気鬱結・心下痞満に。横隔膜の気滞を解く組み合わせ。
  • ② 嘔吐・げっぷ・胃気上逆:中庭(CV16)+上脘(CV13)内関(PC6)足三里(ST36)→ 胃気を降ろし、逆流性食道炎や神経性胃炎に応用。
  • ③ 不安・動悸・心煩:中庭(CV16)+鳩尾(CV15)神門(HT7)太衝(LR3)→ 心下の緊張を緩め、心神安定を図る。
  • ④ 呼吸が浅い・ため息が多い:中庭(CV16)+膻中(CV17)天突(CV22)太淵(LU9)→ 胸郭の気の巡りを促し、息苦しさを改善。
  • ⑤ ストレス性の胸痛・胃痛:中庭(CV16)+鳩尾(CV15)中脘(CV12)太衝(LR3)→ 肝気鬱結と胃気上逆を同時に鎮める組み合わせ。
  • 中庭は、心包と胃の間の気の通り道にあるため、 「心下痞満」「胸膈気滞」の両方に関わる調整点です。 現代ではストレス性の胃部不快・不安症・過呼吸傾向に広く応用されます。


※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。

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