名称
- 和名:上脘(じょうかん)
- 経穴:任脈(CV13)
- 英名:Shangwan (CV13)
取穴(位置・取り方)
解剖(近接構造)
- 皮下には白線、腹直筋鞘前葉、腹直筋鞘後葉、腹膜がある。
- 深部には胃噴門部、横隔膜脚が位置する。
- 支配神経:第7肋間神経(T7)の前皮枝。
- 血管:上腹壁動脈・静脈の枝が分布。
東洋医学的作用(要点)
- 和胃降逆: 胃気を整え、嘔吐やしゃっくりを治す。
- 疏肝理気: 肝気の鬱結を解消し、心下のつかえを除く。
- 化痰寛膈: 痰湿を除き、胸脇部の痞満を緩和する。
主な適応
- 胃痛、嘔吐、げっぷ、しゃっくり、胃酸過多。
- 胸のつかえ、心下痞満、神経性胃炎。
- 胃食道逆流症、胃痙攣、慢性胃炎。
- ストレス性胃痛、肋間神経痛。
古典的記載・応用例
- 『鍼灸甲乙経』:「上脘主胃中寒熱、嘔逆、心下満痛を治す。」
- 『銅人腧穴鍼灸図経』:「胃気上逆、嘔吐、膈中痞満を主る。」
- 『針灸大成』では「胃の上口を治する要穴」として、噴門部症状に対応。
- 古来より中脘と並び、胃気上逆・食滞・肝胃不和の治療に重用された。
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼: 直刺 0.5〜1.0寸。深刺により腹膜や胃を損傷しないよう注意。
- 灸法: 艾炷灸・温灸ともに可。冷えによる嘔吐・胃痛に有効。
- 胃の上逆(しゃっくり・逆流)には軽い瀉法が有効。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- 上脘(CV13)は、胃噴門付近に相当し、胃気が上に逆る症状(嘔吐・しゃっくり・胃酸逆流)に特に適します。 同じ任脈の中脘(CV12)が「胃の中心(調整点)」なのに対し、上脘は「上口(噴門)の異常に対応する点」です。
- ① 嘔吐・しゃっくり:上脘(CV13)+内関(PC6)+足三里(ST36)→ 胃気の上逆を抑え、嘔吐・しゃっくりを鎮める基本配穴。
- ② 胃食道逆流・胸やけ:上脘(CV13)+中脘(CV12)+膻中(CV17)+太衝(LR3)→ 胃気の上逆を降ろし、肝気鬱結による胸のつかえを緩解。
- ③ 胃痛・心下痞満:上脘(CV13)+建里(CV11)+期門(LR14)+陽陵泉(GB34)→ 肝胃不和・気滞型の胃痛に効果的。
- ④ 食滞・消化不良:上脘(CV13)+中脘(CV12)+天枢(ST25)+足三里(ST36)→ 消化機能を整え、胃内停滞を除く。
- ⑤ ストレス性胃症状:上脘(CV13)+太衝(LR3)+内関(PC6)+膻中(CV17)→ 肝気鬱結による胃部不快感やげっぷに。
- 上脘は「上焦と中焦の境」に位置し、 上逆する気を下げ、痰や滞りを開く働きが強いです。 精神的ストレスによる胃部のつかえや嘔吐など、“肝胃不和”のパターンでは最も重要な穴の一つです。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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