名称
- 和名:建里(けんり)
- 経穴:任脈(CV11)
- 英名:Jianli (CV11)
取穴(位置・取り方)
解剖(近接構造)
- 皮下に白線、さらに腹直筋鞘・腹膜がある。
- 深部には胃体部下部、横行結腸上部が位置。
- 支配神経:第8肋間神経(T8)の前皮枝。
- 血管:上腹壁動脈・静脈の枝が分布。
東洋医学的作用(要点)
- 和胃調中: 胃気を整えて嘔吐や食滞を治す。
- 理気化滞: 気の滞りを解き、腹満・鼓脹を緩和する。
- 健脾助運: 脾の運化を助け、食欲不振や消化不良に用いる。
- 寛胸除痞: 心下痞(胸のつかえ)を除き、胸腹部の気鬱を緩解。
主な適応
- 胃痛、腹満、食滞、胃アトニー。
- 嘔吐、しゃっくり、げっぷ。
- 食欲不振、消化不良。
- 慢性胃炎、胃下垂、神経性胃腸障害。
- 胸のつかえ、心下痞。
古典的記載・応用例
- 『鍼灸甲乙経』:「建里主胃中寒熱、嘔吐、腹中雷鳴を治す。」とあり、寒熱錯雑による胃不調の治療穴として挙げられる。
- 『銅人腧穴鍼灸図経』では「食不下、心下痞満を主る」とあり、胃気上逆や食滞に用いることが示されている。
- 『針灸大成』では中脘・下脘・建里を“胃の三里”として、上中下の気機を調える三段階治療に用いると解説される。
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼: 直刺 0.8〜1.2寸。深刺により腹膜を損傷しないよう注意。
- 灸法: 艾炷灸・温灸ともに適応。特に冷えを伴う腹満や胃痛に効果的。
- 冷えの強い場合は中脘(CV12)・神闕(CV8)との灸併用が有効。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- 建里(CV11)は「中焦の中部」に位置し、胃体部の気機を調える代表穴です。 特に「胃気が上逆する(嘔吐・しゃっくり)」あるいは「気滞して降らない(膨満・痞え)」といった症状に用いられます。 中脘が全体的な胃気の調整に優れるのに対し、建里はより「動的な働き(運化・通滞)」に優れています
- ① 嘔吐・しゃっくり:建里(CV11)+内関(PC6)+足三里(ST36)→ 胃気の上逆を鎮め、嘔吐・しゃっくり・胸焼けに効果的。
- ② 食滞・胃脘部のつかえ:建里(CV11)+中脘(CV12)+下脘(CV10)+天枢(ST25)→ 胃内停滞を除き、食積や腹部膨満に用いる。
- ③ 食欲不振・胃アトニー:建里(CV11)+関元(CV4)+足三里(ST36)+脾兪(BL20)→ 脾胃の運化を高め、慢性の虚弱性胃腸障害に有効。
- ④ 冷えを伴う胃痛:建里(CV11)+中脘(CV12)+神闕(CV8)+気海(CV6)→ 温灸併用で中焦の寒邪を除き、痛みと冷えを改善。
- ⑤ 心下痞・胸のつかえ:建里(CV11)+膻中(CV17)+期門(LR14)+内関(PC6)→ 胸腹部の気滞を除き、情動性の胃症状にも対応。
- 臨床では中脘・建里・下脘の3穴を「胃の三部治療点」として同時に取ることが多く、 これにより胃上部から幽門までの気機を一貫して整えることができます。 気滞・食滞には軽い瀉法、虚寒には補法+灸を用いるのが基本です。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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