名称
- 和名:玉堂(ぎょくどう)
- 経穴:任脈(CV18)
- 英名:Yutang (CV18)
取穴(位置・取り方)
解剖(近接構造)
- 皮下に胸骨、胸筋膜があり、その下に胸腔(心臓・大血管)が位置する。
- 支配神経:第3肋間神経の前皮枝。
- 血管:内胸動脈・静脈の枝。
東洋医学的作用(要点)
- 寛胸理気: 胸部の気滞を解消し、胸のつかえを取る。
- 調心安神: 心気の不調を鎮め、不安・動悸を和らげる。
- 降逆化痰: 胸膈の痰滞を除き、咳嗽・喘息を改善する。
- 開鬱止痛: 胸痛や胸悶(胸苦しさ)を解消する。
主な適応
- 咳嗽、喘息、気管支炎。
- 胸痛、狭心症様症状、心悸亢進。
- 胸満、胸悶、息苦しさ。
- ヒステリー、情動不安、緊張性の呼吸困難。
古典的記載・応用例
- 『鍼灸甲乙経』:「玉堂主胸満、咳逆上気、心痛。」と記され、胸中の気滞・心痛に用いるとある。
- 『銅人腧穴鍼灸図経』:「治心胸痞悶、咳嗽、喘息。」とあり、胸の痞えや呼吸器疾患への応用が示される。
- 『針灸大成』:「胸満、喘嗽、心痛に宜し。」と明記され、胸膈の鬱滞に対する標準穴とされている。
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼: 斜刺 0.3〜0.5寸(胸骨に沿って皮下方向へ)。深刺厳禁。
- 灸法: 艾炷灸・温灸ともに適応(軽刺激)。
- 気滞による胸悶には浅刺して軽く瀉法、虚弱性の喘息には温灸で補法を行う。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- 玉堂(CV18)は、胸の上中部にあり、心肺の機能を調える任脈の重要穴です。 特に「胸のつかえ」「呼吸の浅さ」「気が上衝する感覚」に対してよく用いられます。 心気と肺気が交わる位置にあり、気滞・痰滞の双方に対応可能です。
- ① 胸のつかえ・息苦しさ:玉堂(CV18)+膻中(CV17)+内関(PC6)+期門(LR14)→ 胸膈の気機を通じ、情動性・ストレス性の胸部緊張を緩める。
- ② 咳嗽・喘息:玉堂(CV18)+天突(CV22)+尺沢(LU5)+太淵(LU9)→ 肺気上逆を降ろし、咳や喘鳴を鎮める。
- ③ 動悸・胸痛:玉堂(CV18)+神門(HT7)+膻中(CV17)+内関(PC6)→ 心気を整え、心悸や胸部圧迫感を改善。
- ④ ヒステリー・情動不安:玉堂(CV18)+膻中(CV17)+神門(HT7)+太衝(LR3)→ 気鬱を開き、心神の安定を図る。
- 任脈の上でみると、璇璣(CV21)〜膻中(CV17)までの一連の胸部経穴は、 呼吸・循環・情動の三系統に強く影響します。 中でも玉堂は「胸の中央で心に近い」位置にあるため、“心気の鬱結を開く穴”として古くから重視されています。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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