玉堂まとめ:効能・取穴・関連症状

名称

  • 和名:玉堂(ぎょくどう)
  • 経穴:任脈(CV18)
  • 英名:Yutang (CV18)


取穴(位置・取り方)

  • 前胸部の前正中線上、第3肋間に取る。
  • 胸骨体上の陥凹部で、璇璣(CV21)膻中(CV17)の中間あたり。
  • 体表の目安:胸骨角の高さが第2肋間、その1肋間下が玉堂(第3肋間)。


解剖(近接構造)

  • 皮下に胸骨、胸筋膜があり、その下に胸腔(心臓・大血管)が位置する。
  • 支配神経:第3肋間神経の前皮枝。
  • 血管:内胸動脈・静脈の枝。


東洋医学的作用(要点)

  • 寛胸理気: 胸部の気滞を解消し、胸のつかえを取る。
  • 調心安神: 心気の不調を鎮め、不安・動悸を和らげる。
  • 降逆化痰: 胸膈の痰滞を除き、咳嗽・喘息を改善する。
  • 開鬱止痛: 胸痛や胸悶(胸苦しさ)を解消する。


主な適応

  • 咳嗽、喘息、気管支炎。
  • 胸痛、狭心症様症状、心悸亢進。
  • 胸満、胸悶、息苦しさ。
  • ヒステリー、情動不安、緊張性の呼吸困難。


古典的記載・応用例

  • 『鍼灸甲乙経』:「玉堂主胸満、咳逆上気、心痛。」と記され、胸中の気滞・心痛に用いるとある。
  • 『銅人腧穴鍼灸図経』:「治心胸痞悶、咳嗽、喘息。」とあり、胸の痞えや呼吸器疾患への応用が示される。
  • 『針灸大成』:「胸満、喘嗽、心痛に宜し。」と明記され、胸膈の鬱滞に対する標準穴とされている。


刺鍼法・施灸法

  • 刺鍼: 斜刺 0.3〜0.5寸(胸骨に沿って皮下方向へ)。深刺厳禁。
  • 灸法: 艾炷灸・温灸ともに適応(軽刺激)。
  • 気滞による胸悶には浅刺して軽く瀉法、虚弱性の喘息には温灸で補法を行う。


臨床のコツ・刺鍼コンビネーション

  • 玉堂(CV18)は、胸の上中部にあり、心肺の機能を調える任脈の重要穴です。 特に「胸のつかえ」「呼吸の浅さ」「気が上衝する感覚」に対してよく用いられます。 心気と肺気が交わる位置にあり、気滞・痰滞の双方に対応可能です。
  • ① 胸のつかえ・息苦しさ:玉堂(CV18)+膻中(CV17)内関(PC6)期門(LR14)→ 胸膈の気機を通じ、情動性・ストレス性の胸部緊張を緩める。
  • ② 咳嗽・喘息:玉堂(CV18)+天突(CV22)尺沢(LU5)太淵(LU9)→ 肺気上逆を降ろし、咳や喘鳴を鎮める。
  • ③ 動悸・胸痛:玉堂(CV18)+神門(HT7)膻中(CV17)内関(PC6)→ 心気を整え、心悸や胸部圧迫感を改善。
  • ④ ヒステリー・情動不安:玉堂(CV18)+膻中(CV17)神門(HT7)太衝(LR3)→ 気鬱を開き、心神の安定を図る。
  • 任脈の上でみると、璇璣(CV21)膻中(CV17)までの一連の胸部経穴は、 呼吸・循環・情動の三系統に強く影響します。 中でも玉堂は「胸の中央で心に近い」位置にあるため、“心気の鬱結を開く穴”として古くから重視されています。


※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。

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