陰交まとめ:効能・取穴・関連症状

名称

  • 和名:陰交(いんこう)
  • 経穴:任脈(CV7)
  • 英名:Yinjiao (CV7)


取穴(位置・取り方)

  • 下腹部、臍下1寸に取る。
  • 正中線上で、上方に関元(CV4)、下方に曲骨(CV2)を結んだ線上に位置する。
  • 腹直筋が左右に張る部位で、皮下に浅い陥凹を感じる部分。


解剖(近接構造)

  • 表層:皮膚、皮下組織。
  • 筋層:腹直筋鞘前葉、腹直筋。
  • 神経:肋下神経(第12肋間神経)、腸骨下腹神経。
  • 血管:下腹壁動・静脈分枝。
  • 臓器:膀胱上縁に近く、膀胱充満時の深刺は禁忌。


東洋医学的作用(要点)

  • 調衝任・理下焦: 任脈と衝脈の交会穴であり、生殖・泌尿・月経機能の調整に関わる。
  • 温補腎陽: 下焦の虚寒を温め、腎陽を助ける作用があるとされる。
  • 固精止遺: 遺精・精漏・帯下などに応用される。
  • 利尿・通経: 小便不利や月経不順の改善を図る。


主な適応

  • 月経不順、無月経、月経痛。
  • 不妊症、帯下、不正出血。
  • 遺精、陽萎、インポテンツ。
  • 小便不利、頻尿、尿閉、膀胱炎。
  • 下腹部冷感、下肢のむくみ、冷え症。


古典的記載・応用例

  • 『霊枢・経脈篇』:「任脈者、起於中極之下、以上毛際、循腹裏、上關脘、至咽喉。」—— 任脈は下焦から上に昇る陰の気の通路であり、陰交は衝任が交わる節要。
  • 『鍼灸甲乙経』:「治婦人血閉、帯下、腰痛。」とあり、婦人科疾患への応用が古来より重視された。
  • 『備急千金要方』では「温腎益気、調経止帯の要穴」として挙げられている。


刺鍼法(安全重視)

  • 刺入方向: 直刺または軽い斜刺(頭側方向)。
  • 刺入深さ: 0.8〜1.2寸(約15〜25mm)。
  • 注意: 膀胱充満時は深刺を避ける。下腹部刺鍼では常に膀胱排尿後に行う。
  • 灸法: 温灸・知熱灸が有効。婦人科疾患や冷え症では多用される。


臨床のコツ・刺鍼コンビネーション

  • 陰交(CV7)は、任脈と衝脈の交会穴として、女性の生理・生殖機能や下焦の陰陽調整に重要な位置を占めます。 特に月経不順や不妊、下腹部の冷えなど「陰陽の交わりの不調」によく用いられます。 また、下腹部の冷えを伴う泌尿器・婦人科疾患には灸法の併用が有効です。
  • ① 月経不順・無月経: 陰交(CV7)+関元(CV4)三陰交(SP6)帰来(ST29) → 血行と気機を調整し、衝任の通りを良くする。
  • ② 不妊症:陰交(CV7)+中極(CV3)気穴(KI13)次髎(BL32) → 衝任を整え、子宮内環境を温めて受胎力の改善を図る。
  • ③ 遺精・性機能低下: 陰交(CV7)+関元(CV4)太谿(KI3)腎兪(BL23) → 腎気を補い、精関を固める補法。
  • ④ 尿閉・頻尿: 陰交(CV7)+中極(CV3)陰陵泉(SP9)膀胱兪(BL28) → 下焦の気滞・水滞を通し、利尿を促す。
  • 全体として「陰陽の交わり」を調える治療点であり、婦人科・泌尿器科の要穴として多くの古典や臨床で重視されています。


※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。

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