名称
- 和名:会陰(えいん)
- 経穴:任脈(CV1)
- 英名:Huiyin (CV1)
取穴(位置・取り方)
- 会陰部、男性では陰嚢と肛門の中央、女性では陰唇後交連と肛門の中央に取る。
- 体表では肛門と外陰部のちょうど真ん中にあるため、姿勢は膝屈または側臥位で取穴する。
- 「会陰」とは、任脈・督脈・衝脈の三脈が交わる「陰の会う処」という意味。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋肉:浅会陰横筋、外肛門括約筋。
- 神経:陰部神経、会陰神経枝。
- 血管:会陰動・静脈分枝(内陰部動脈系)。
- ※刺鍼時は膀胱・直腸・生殖器の方向に注意。
東洋医学的作用(要点)
- 固脱・回陽救逆: 意識消失・昏厥・虚脱を回復させる要穴。
- 利二陰・調下焦: 排尿・排便機能の調整、生殖器・泌尿器疾患に用いる。
- 止血・止痛: 月経過多や痔出血などの下焦出血を抑える。
- 安神: 精神不安、心腎不交による不眠・焦燥にも応用される。
主な適応
- 昏厥、虚脱、ショック時の応急処置(意識回復補助)。
- 小便不利、尿閉、尿失禁。
- 痔疾、直腸脱、肛門痛、肛門湿疹。
- 陰部痛、会陰部の腫脹・炎症。
- 精漏、遺精、月経異常、子宮脱、陰道炎。
古典的記載・応用例
- 『霊枢・経脈篇』:「任脈者、起於中極之下、以上毛際、循腹裏、上關脘、至咽喉。」—— 会陰は任脈の起始であり、陰陽の気が交わる根源。
- 『難経』:「任脈主胞中、上循咽喉、入頤中、系於目。」—— 生殖・泌尿・咽喉まで通ずる生命の根本経脈。
- 『鍼灸甲乙経』:虚脱・意識不明時に刺すと「陽気を回らせる」作用があると記される。
刺鍼法(安全重視)
- 刺入方向: 体幹に向かって浅く斜刺、または肛門方向にごく浅刺。
- 刺入深さ: 0.5〜1寸(約10〜20mm)以内。深刺・強刺激は禁忌。
- 姿勢: 膝屈位または側臥位で、患者の羞恥心と安全に配慮する。
- 灸法: 直接灸は禁止。知熱灸や温灸を行う場合は防火布を使用。
- 注意: 会陰部は神経・血管が集中するため、感染防止・清潔操作が最重要。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- 会陰(CV1)は、身体の「陰気の源」であり、任脈・督脈・衝脈の三脈が交わる極めて重要な穴です。 陰陽の転換点であることから、虚脱や下焦疾患、性機能低下など「生命力の根本」に関わる症状に広く応用されます。
- ① 意識障害・ショック時: 会陰(CV1)+水溝(GV26)+涌泉(KI1)+中衝(PC9)
- ② 尿閉・排尿困難: 会陰(CV1)+中極(CV3)+三陰交(SP6)+次髎(BL32)
- ③ 月経異常・子宮脱: 会陰(CV1)+関元(CV4)+三陰交(SP6)+気穴(KI13)
- ④ 痔疾・肛門痛: 会陰(CV1)+BL57(承山)+長強(GV1)+白環兪(BL30)
- 精神的に不安定な患者や、生命力の低下を感じる場合にも、 会陰は「元気の根を動かす」補助穴として用いられます。 ただし粘膜近くのため、必ず衛生管理を徹底し、過度な刺激を避けることが重要です。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
0 件のコメント:
コメントを投稿