名称
- 和名:齦交(ぎんこう)
- 経穴:督脈(GV28)
- 英名:Yinjiao (GV28)
取穴(位置・取り方)
- 上唇裏面、上唇小帯の根元で、上歯龈(歯ぐき)と上唇粘膜との移行部に取る。
- 兌端(GV27)の上方にあり、上唇をめくると歯肉との境目に小さな陥凹が感じられる。
- 「齦」は歯ぐき、「交」は交わるの意で、督脈と任脈が交わる要地を示す。
解剖(近接構造)
- 表層:上唇粘膜。
- 筋肉:口輪筋。
- 神経:上歯槽神経(上顎神経分枝)、顔面神経の枝。
- 血管:上唇動脈・上歯槽動脈分枝。
東洋医学的作用(要点)
- 開竅醒神: 意識を蘇らせ、神志を安定させる。
- 通絡止痛: 顔面部の経脈を通じ、歯痛・口唇痛・歯肉痛を鎮める。
- 清熱利口: 口腔内の熱を取り除き、唇や歯ぐきの腫脹を治す。
主な適応
- 意識障害、卒中、癲癇(てんかん)発作。
- 歯痛、歯肉炎、歯槽膿漏。
- 上唇痛、口唇炎、口内炎。
- 唇の痙攣、口の歪み(顔面神経麻痺)。
- 鼻出血の補助治療。
刺鍼法(安全重視)
- 刺入方向: 粘膜に対して斜め下方または水平に浅刺。
- 刺入深さ: 0.1〜0.2寸(約2〜4mm)。
- 灸法: 不可(粘膜部のため)。
- 注意: 粘膜部位であり、清潔操作・感染対策が必須。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- 齦交(GV28)は、督脈の最前端であり、任脈と交わる重要な交会穴です。 古典では「唇歯の熱を清め、意識を開く穴」とされ、口腔疾患や急救時の補助穴として重視されてきました。 「兌端(GV27)」と上下に並ぶことから、この2穴はしばしばセットで用いられます。
- ① 昏厥・気絶:齦交(GV28)+水溝(GV26)+兌端(GV27)+涌泉(KI1)
- ② 歯痛・歯肉炎:齦交(GV28)+合谷(LI4)+頬車(ST6)+下関(ST7)
- ③ 顔面神経麻痺: 齦交(GV28)+地倉(ST4)+頬車(ST6)+陽白(GB14)+合谷(LI4)
- ④ 鼻出血・口内炎: GV28(齦交)+水溝(GV26)+迎香(LI20)+合谷(LI4)
- 齦交は「任督交会の門」として、全身の陰陽気機の交流を司る象徴的な位置にあります。 唇・歯・鼻・意識と関わる症状に対して、小範囲ながら深い全身的効果を発揮します。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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