名称
- 和名:帰来(きらい)
- 経穴:足の陽明胃経(ST29)
- 英名:Guilai (ST29)
取穴(位置・取り方)
- 下腹部、臍の下4寸、中行(正中線)から外方2寸に取る。
- 中極(CV3)の外方2寸に相当する。
- 臍から恥骨結合上縁に向かうライン上で位置を定める。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋層:腹直筋鞘。
- 神経・血管:第12肋間神経の枝、下腹壁動脈・静脈。
- 深部:小腸、女性では子宮に近接。
東洋医学的機能
- 調経作用:月経を調整し、不妊症や月経異常に用いられる。
- 補腎益精:腎精を補い、男女の生殖機能を高める。
- 下焦通調:下腹部の気血を整え、疼痛や冷えを改善する。
臨床応用(主な適応)
- 婦人科疾患:不妊症、月経不順、月経痛、閉経、子宮出血、子宮下垂。
- 泌尿器:排尿障害、頻尿。
- 消化器:下腹部痛、腹満。
- 古典的応用:『鍼灸甲乙経』では「婦人の不妊、月経不調」に特効ありと記され、婦人科に特に重視されてきた。
刺鍼法(安全面も含めて)
- 針具:0.16–0.25mm、30–50mm。
- 刺入方向・深さ:直刺で0.8–1.2寸。
- 腹部なので深刺には注意し、瘦せ型では浅めに調整。
- 灸法:子宮虚寒・冷えによる不妊や月経痛に有効。
禁忌・注意
- 妊娠中は流産を誘発する恐れがあるため禁忌。
- 臓器損傷防止のため、深刺しすぎないように注意。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
帰来は「帰って来る」の名のごとく、婦人科疾患において生殖機能を呼び戻す意をもつ重要穴です。不妊や月経不順、冷え症の治療に頻用されます。
- 不妊症:帰来(ST29)+関元(CV4)+三陰交(SP6)+子宮(奇穴)。
- 月経痛:帰来(ST29)+次髎(BL32)+地機(SP8)。
- 冷え症・子宮寒:帰来(ST29)+気海(CV6)+命門(GV4)。
- 排尿障害:帰来(ST29)+中極(CV3)+腎兪(BL23)。
臍下部の気血を調整する要穴として、婦人科を中心に幅広く応用できる点が臨床上のポイントです。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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