名称
- 和名:球後(きゅうご)
- 経穴分類:経外奇穴(頭顔部)
- 英名:Qiuhou (EX-HN7)
- 別名:眼球後、眼後
取穴(位置・取り方)
- 眼窩下縁の外1/4と内3/4の接合点、眼球後方の陥凹部に取る。
- 目を閉じさせ、下眼瞼を軽く押して眼球を上方に転じた状態で取穴する。
- 承泣(ST1)のやや外方・眼窩縁のやや内側に位置する。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織、眼輪筋。
- 深層:眼窩脂肪体、下直筋、外直筋、視神経。
- 神経:眼神経・動眼神経の枝、眼窩下神経。
- 血管:眼動・静脈、眼窩下動・静脈。
東洋医学的作用(要点)
- 明目・退翳: 視力を改善し、目の濁り・かすみを除く。
- 祛風清熱: 風熱による目の充血や腫痛を鎮める。
- 通絡止痛: 眼部の経絡を通し、痛みを止める。
主な適応症
- 視力低下、近視、遠視、老眼。
- 緑内障、白内障の補助療法。
- 角膜炎、結膜炎、麦粒腫(ものもらい)。
- 眼精疲労、視神経萎縮。
- 眼筋麻痺、複視(ダブルビジョン)。
古典的記載・由来
- 「球」は眼球、「後」は後方を意味し、眼球の後方に取る穴であることから「球後」と名づけられた。
- 『鍼灸聚英』では「治目痛赤腫、昏花、視不明」と記載されている。
刺鍼法・施灸法
- 刺鍼: 眼球を軽く上方に転じさせ、下眼窩縁に沿って眼球後方へ向けて平刺または斜刺 0.5〜1.0寸。
※絶対に深刺しない。眼球損傷の危険があるため、熟練者のみ行う。 - 施灸: 通常、灸は行わない(熱による眼損傷防止のため)。
- 注意: 刺鍼はきわめて慎重に。目の痛み・圧迫感があれば即座に抜鍼。
臨床のコツ・応用例
- ① 視力回復・眼精疲労:球後(EX-HN7)+睛明(BL1)+承泣(ST1)+四白(ST2) → 目の血行促進・視神経機能改善・疲労軽減に優れる。視力低下やデジタル疲労に非常に有効。
- ② 緑内障・眼圧上昇:球後(EX-HN7)+太陽(EX-HN5)+合谷(LI4)+太衝(LR3) → 眼圧降下作用を補助。肝気上逆や風熱による眼疾患に応用。
- ③ 視神経萎縮・複視:球後(EX-HN7)+攅竹(BL2)+魚腰(EX-HN4)+風池(GB20) → 神経伝達の活性化、視野改善、眼筋協調性の回復を促す。
- ④ 慢性結膜炎・充血:球後(EX-HN7)+睛明(BL1)+太陽(EX-HN5)+合谷(LI4) → 局所の血流とリンパ循環を改善、炎症・腫脹を緩和。
- 臨床メモ
- 眼疾患における最重要奇穴のひとつ。
- 効果は強力だが、解剖を誤ると失明などの重大なリスクを伴う。
- 眼科鍼の専門技術として訓練を受けた者のみが施術すべき経穴。
- 安全性を重視する場合は、睛明(BL1)・魚腰(EX-HN4)・太陽(EX-HN5)を用いる代替も可能。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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