名称
- 和名:屋翳(おくえい)
- 経穴:足の陽明胃経(ST15)
- 英名:Wuyi (ST15)
取穴(位置・取り方)
- 第2肋間、前正中線から4寸外方に取る。
- 乳頭のやや外上方に位置し、庫房(ST14)の1肋間下にあたる。
- 肋間の高さを確認する際には、胸骨角を基準に第2肋間を触知すると確実。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚・皮下組織。
- 筋層:大胸筋。
- 神経・血管:肋間神経・肋間動脈の枝。
- 深部は肺尖部に近く、過刺により気胸の危険がある。
東洋医学的機能(要点)
- 理気寛胸:胸中の気滞を解消し、胸満や胸悶を緩和する。
- 宣肺止咳:肺気を宣通させ、咳嗽や喘息に応用される。
- 乳疾に関連:乳房周囲の腫脹や疼痛にも利用される。
臨床応用(胸部・呼吸器疾患、乳疾など)
- 呼吸器疾患:咳嗽、気管支炎、喘息。
- 循環器・胸部症状:胸痛、胸悶、動悸。
- 乳房関連:乳房の腫脹・乳痈(乳腺炎)、乳汁分泌不全。
刺鍼法(安全重視)
- 推奨針サイズ:直径0.14–0.20mm、長さ25–40mm。
- 刺入方向と深さ:
- 胸壁に沿ってやや外側または斜めに0.3–0.5寸(約5–10mm)。
- 胸腔方向への直刺・深刺は禁忌。
- 保持時間:10–15分。急性症状には軽刺激、慢性疾患にはやや長めの置鍼。
- 灸法:温灸を併用すると冷えを伴う慢性呼吸器疾患や乳房の不調に応用される。
禁忌・注意
- 気胸を避けるため必ず表層の浅刺・斜刺を徹底する。
- 乳腺炎などの急性炎症期には強刺激を避ける。
- 乳房組織が発達している女性では特に安全に配慮する。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- 屋翳(ST15)は、胸部の気滞や肺気不利による咳嗽や胸悶に用いられるほか、乳疾に対しても古くから応用されてきました。
- 慢性咳嗽には膻中(CV17)、肺兪(BL13)、中府(LU1)と組み合わせ、胸満や息苦しさがある場合には内関(PC6)や天突(CV22)を加えるとより効果的とされます。
- 乳腺炎や乳汁分泌不全の際には乳根(ST18)、膻中(CV17)、少沢(SI1)などと併用し、乳房の通絡や気血の巡りを改善するように配穴されます。
- 胸中の停滞感を解消する意味でも、庫房(ST14)や膺窓(ST16)と併用し、胸部の局所循環を整えることが多いです。
- いずれの場合も刺鍼の深さには細心の注意を払い、安全を第一に施術を行うことが大切です。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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