名称
- 和名:庫房(こぼう)
- 経穴:足の陽明胃経(ST14)
- 英名:Kufang (ST14)
取穴(位置・取り方)
- 第1肋間、前正中線から4寸外方に取る。
- 乳頭のやや上方、鎖骨下の胸壁に位置する。
- 体型によっては肋間を触知しづらいため、呼吸運動に合わせて肋間の陥凹を確認するとよい。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚・皮下組織。
- 筋層:大胸筋、小胸筋。
- 神経・血管:肋間神経・肋間動脈の枝が走行。
- 深部は胸腔(肺尖部)に近接するため、深刺により気胸の危険がある。
東洋医学的機能(要点)
- 理気寛胸:胸中の気滞を調え、胸悶・胸痛を和らげる。
- 宣肺止咳:肺気の不利を改善し、咳嗽・喘息に応用される。
- 調和胃気:胃経の流注上、胸中から胃脘に至る不調(胸やけ・逆流感)にも関係するとされる。
臨床応用(胸部・呼吸器疾患など)
- 呼吸器疾患:咳嗽、喘息、気管支炎。
- 循環器症状:胸痛、動悸、息切れ。
- 消化器症状:胸やけ、食道逆流感。
刺鍼法(安全重視)
- 推奨針サイズ:直径0.14–0.20mm、長さ25–40mm。
- 刺入方向と深さ:
- 皮膚に対してやや斜めに胸壁に沿わせて0.3–0.5寸(約5–10mm)。
- 胸腔方向への深刺は禁忌。
- 保持時間:10–15分程度。胸悶や咳嗽には軽刺激、慢性症状にはやや長めに置鍼。
- 灸法:温灸を用いると慢性呼吸器疾患や冷えを伴う胸部症状に有効。
禁忌・注意
- 最重要:気胸を避けるため、必ず表層・斜刺とする。
- 呼吸器症状で咳発作が強い場合、刺鍼時に体動で針が動く危険があるため注意。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
- 庫房(ST14)は胸中の気滞や肺気の不利に対して有効とされる経穴です。
- 臨床では、咳嗽や喘息には膻中(CV17)、肺兪(BL13)などと組み合わせることで呼吸の通りをよくし、胸満・胸悶を伴う場合には内関(PC6)や膻中(CV17)と合わせて気を巡らせるように応用されます。
- 逆流性食道炎や胸やけなど消化器系の症状には、中脘(CV12)や足三里(ST36)を補助的に加えるとよいとされます。
- 肩前部や鎖骨下に広がる痛みに対しては、肩髃(LI15)や雲門(LU2)と組み合わせて鎖骨周囲の気血の停滞を改善することもあります。
- 庫房は比較的応用範囲が広いですが、いずれも刺鍼の際には浅刺・斜刺を徹底し、安全を最優先に活用することが肝要です。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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