名称
- 和名:髀関(ひかん)
- 経穴:足の陽明胃経(ST31)
- 英名:Biguan (ST31)
取穴(位置・取り方)
- 大腿前面の鼠径部、上前腸骨棘と膝蓋骨外縁を結ぶ線の上で、鼠径溝の下方に取る。
- 具体的には、股関節部の鼠径靭帯下方で大腿直筋外側、縫工筋内側の間に位置する。
- 股関節を軽く屈曲すると陥凹が明瞭になり取りやすい。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋層:大腿直筋、縫工筋、腸腰筋起始部。
- 神経:大腿神経、大腿外側皮神経。
- 血管:大腿動脈・静脈が内側に近接。
- 深部:股関節包に近接。
東洋医学的機能
- 下肢気血を通す:下肢の麻痺や萎縮を改善。
- 経絡疏通:陽明胃経の通りを良くし、下肢の痛み・痺れを和らげる。
- 股関節の機能調整:運動障害や関節の違和感に作用。
臨床応用(主な適応)
- 運動器疾患:股関節痛、変形性股関節症、坐骨神経痛、大腿の痺れや痛み。
- 下肢麻痺・萎縮:中風後遺症による歩行障害、下肢の脱力。
- 整形外科的疾患:スポーツによる股関節周囲炎、大腿前面の張り。
刺鍼法(安全重視)
- 針具:0.20–0.30mm、40–60mm。
- 刺入方向と深さ:直刺で1.0–1.5寸。
股関節包に近接するため深刺には注意。 - 灸法:冷えや筋萎縮を伴う場合に有効。
禁忌・注意
- 大腿動脈が近接するため、内側への刺入は避ける。
- 深刺により股関節包を損傷しないよう注意。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
髀関は「股関節機能と下肢の通りをよくする要穴」として、運動障害の治療で多用されます。 特に股関節疾患や坐骨神経痛に応用範囲が広いです。
- 股関節痛・運動障害:髀関(ST31)+伏兎(ST32)+梁丘(ST34)。
- 坐骨神経痛:髀関(ST31)+殷門(BL37)+承扶(BL36)。
- 下肢麻痺・萎縮:髀関(ST31)+環跳(GB30)+足三里(ST36)。
下肢全体の「起点」となる部位なので、リハビリ鍼灸や歩行改善プログラムで重視されます。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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