名称
- 和名:陰市(いんし)
- 経穴:足の陽明胃経(ST33)
- 英名:Yinshi (ST33)
取穴(位置・取り方)
- 大腿前面、髂前上棘と膝蓋骨外上縁を結ぶ線上。
髂前上棘から膝蓋骨外上縁までを三等分し、その下1/3の点に取る。 - 大腿直筋のやや外側、筋腹部にある。
- 膝を軽く屈曲させると筋肉が緊張して取りやすい。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋層:大腿直筋、外側広筋。
- 神経:大腿神経の枝。
- 血管:外側大腿回旋動脈の分枝が近接。
東洋医学的機能
- 経絡を通す:下肢の気血循環を促進し、筋肉・関節の働きを改善。
- 筋肉の強化:萎縮や麻痺を回復させる作用があるとされる。
- 膝関節の調整:膝周囲の痛みや可動域制限に用いられる。
臨床応用(主な適応)
- 運動器疾患:大腿部痛、股関節痛、膝関節痛。
- 神経疾患:下肢麻痺、中風後の歩行障害。
- 整形外科的疾患:大腿四頭筋炎、スポーツ障害。
- 婦人科疾患:下腹部の冷えや月経不調に応用される場合もある。
刺鍼法(安全重視)
- 針具:0.20–0.30mm、40–60mm。
- 刺入方向と深さ:直刺で1.0–1.5寸。筋肉層に十分入れる。
- 灸法:冷えや慢性症状には温灸を加えると効果的。
禁忌・注意
- 深刺しても重要臓器はないが、血管損傷に注意。
- 過度の強刺激は筋肉の緊張を悪化させることがあるため適度な刺激を心がける。
臨床のコツ・刺鍼コンビネーション
陰市は「大腿部から膝にかけての経気を通じる」要穴で、膝疾患や下肢麻痺の治療に応用されます。特にスポーツ鍼灸では大腿四頭筋の疲労や炎症に対して有用です。
- 膝関節痛:陰市(ST33)+梁丘(ST34)+犢鼻(ST35)。
- 大腿前面の筋肉疲労:陰市(ST33)+伏兎(ST32)+足三里(ST36)。
- 下肢麻痺・歩行障害:陰市(ST33)+髀関(ST31)+環跳(GB30)。
- 婦人科系の応用:陰市(ST33)+関元(CV4)+三陰交(SP6)。
局所治療だけでなく、経絡全体の流れを整えるように腰部や下腹部の経穴と組み合わせると効果が高まります。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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