名称
- 和名:上関(じょうかん)
- 経穴:足の陽明胃経(ST8)
- 英名:Shangguan (ST8)
取穴(位置・取り方)
- 頭部、側頭髪際の角にあり、額角髪際の直後、頭維(ST8)のやや後方に取る(※一部文献で混同あり)。
- 耳前の頬骨弓上縁付近で、口を開閉すると下顎関節突起の動きが触れる部位に位置する。
- 下関(ST7)の上方にあるため「上関」と名づけられた。
解剖(近接構造)
- 表層:皮膚、皮下組織。
- 筋肉:側頭筋、咬筋の付着部近傍。
- 神経:顔面神経の側頭枝、耳介側頭神経(下顎神経の枝)。
- 血管:浅側頭動脈・静脈。
東洋医学的機能(古典的記載)
- 耳目口を調える:耳鳴・難聴・眼疾患に応用された。
- 頭痛を鎮める:偏頭痛や側頭部の痛みに対して用いられた。
- 顎関節を調える:咀嚼障害や口噤に適応された。
古典的応用例
- 耳疾患 – 『鍼灸甲乙経』には耳聾(難聴)、耳鳴への応用が記載。 – 『千金方』には耳閉、耳痛への使用例がある。
- 眼疾患 – 『鍼灸大成』では目赤、目痛、眩暈に応用と記される。 – 特に胆経・胃経の交会部にあるため、目の充血や偏頭痛に用いられた。
- 顎関節疾患 – 『備急千金要方』に、口噤(口が開かない)、咀嚼困難の記録。 – 下顎関節痛や咀嚼筋緊張に対する使用が見られる。
- 頭痛 – 『鍼灸聚英』には、偏頭痛、側頭部痛、頭風に応用されると記載。
刺鍼法(古典的記載・参考)
- 刺入方向:直刺またはやや下方・後方に向ける。
- 刺入深度:0.5〜1.0寸。
- 注意点:浅側頭動脈や神経に近接するため、強刺激は避ける。顎関節に影響しない角度で刺すこと。
- 灸法:慢性的な頭痛や耳疾患に対して灸が用いられた。
※本まとめは古典的記載をもとにした教育的資料です。実際の施術は必ず有資格者の判断のもとで行ってください。
禁忌・注意
- 顔面神経や浅側頭動脈に近いため、深刺・強刺激を避ける。
- 急性炎症(耳炎・顎関節炎)がある場合は刺鍼を控える。
- 清潔保持を徹底する。
臨床のコツ・組み合わせ(古典的視点)
- 耳疾患:聴会(GB2)、聴宮(SI19)とあわせ、耳鳴・難聴・耳閉塞感の改善を図る。
- 眼疾患:風池(GB20)、睛明(BL1)と連携して視力低下・眼精疲労に応用された。
- 顎関節症:頬車(ST6)、下関(ST7)と組み合わせて口噤・咀嚼障害を調整。
- 頭痛・偏頭痛:率谷(GB8)、風池(GB20)とあわせて頭風や側頭部痛を緩和する目的で用いられた。
※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。
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