華蓋まとめ:効能・取穴・関連症状

名称

  • 和名:華蓋(かがい)
  • 経穴:任脈(CV20)
  • 英名:Huagai (CV20)


取穴(位置・取り方)

  • 前胸部の前正中線上、第1肋間に取る。
  • 璇璣(CV21)の下方、紫宮(CV19)の上方に位置する。
  • 胸骨上部のほぼ中央、胸骨柄の下端と胸骨体の接合部付近。
  • 胸骨角(第2肋間)より1肋間上方を目安にすると取りやすい。


解剖(近接構造)

  • 皮下に胸骨体上部および胸骨柄がある。
  • さらに深部には胸腔(上縦隔)があり、心臓上部や大血管が近接。
  • 支配神経:第1肋間神経の前皮枝。
  • 血管:内胸動脈およびその穿通枝が走行。


東洋医学的作用(要点)

  • 宣肺化痰: 肺気を宣発し、痰滞や咳嗽を除く。
  • 清熱利咽: 咽喉の腫痛・熱感を和らげる。
  • 安神定悸: 胸悶・心悸・不安感を鎮める。
  • 理気寛胸: 胸部の気滞や満悶感を解消する。


主な適応

  • 咳嗽、喘息、気短(息切れ)。
  • 胸満、胸痛、胸悶(胸のつかえ)。
  • 咽喉腫痛、咽中閉塞(喉の違和感)。
  • 動悸、不安、神経性の胸部症状。
  • 感情ストレスによる呼吸困難感。


古典的記載・応用例

  • 『鍼灸甲乙経』:「主胸中気満、喘息、咳嗽、咽痛。」と記載。
  • 『銅人腧穴鍼灸図経』:「胸満短気を治す。」とあり、呼吸困難や胸中鬱滞に用いられた。
  • 『針灸大成』:「治胸膈痞悶、咳嗽喘急。」とし、紫宮とともに上焦の気逆・痰滞に対処する要穴とされる。


刺鍼法・施灸法

  • 刺鍼: 斜刺 0.3〜0.5寸(胸骨に沿って下方またはやや斜めに浅く刺入)。
    深刺は心臓・大血管に近接するため厳禁。
  • 灸法: 温灸または知熱灸が有効。慢性咳嗽や虚寒性喘息に用いられる。
  • 補瀉: 気虚・寒嗽では補法、気滞・熱咳では瀉法。


臨床のコツ・刺鍼コンビネーション

  • 華蓋(CV20)は任脈上の胸上部にあり、肺の気機を整える最上位の要穴の一つです。 とくに「上焦の鬱滞」や「肺気不宣」による呼吸障害・胸苦しさに対して有効です。 感情の緊張による息苦しさや、ストレスによる胸部不快にも応用されます。
  • ① 咳嗽・喘息:華蓋(CV20)+天突(CV22)肺兪(BL13)太淵(LU9)→ 肺気を降ろし、痰滞・咳嗽を緩和。慢性喘息にも応用可能。
  • ② 胸悶・胸満:華蓋(CV20)+紫宮(CV19)膻中(CV17)期門(LR14)→ 上中焦の気滞を解消し、気鬱・情緒性胸部圧迫を改善。
  • ③ 咽喉腫痛・喉の違和感:華蓋(CV20)+天突(CV22)合谷(LI4)太衝(LR3)→ 任脈と少陽・陽明経の調整で、咽中閉塞(梅核気様症状)に対応。
  • ④ 心悸・不安・情志症状:華蓋(CV20)+膻中(CV17)内関(PC6)神門(HT7)→ 心包・任脈・心経を連携させ、自律神経性の動悸や胸苦しさを鎮静。
  • 華蓋は文字どおり「胸の上に覆いかぶさる蓋」の意味を持ち、 胸中を開き、心肺の気を調和する“上焦の守護穴”です。 咳嗽や喘息だけでなく、ストレス性の過呼吸・息詰まりにも活用されます。


※本サイトは東洋医学における経穴の学習を目的としています。実際の鍼灸施術は必ず国家資格を持つ専門家にご相談ください。自己治療として刺鍼を行うことは危険ですのでお控えください。

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